2025-150M 「アメリカッチ コウノトリと幸せな食卓」☆☆☆★★

Samerikatsi原題:Amerikatsi
邦題:アメリカッチ コウノトリと幸せな食卓
時間:121分
公開:2025-06-13
製作年度:2022
製作国:アルメニア・アメリカ
配給:彩プロ
製作総指揮:
製作:
監督:マイケル・グールジャン
脚本:マイケル・グールジャン
原作:
撮影:ガセム・エブラヒミアン
音楽:アンドラニク・ベルベリャン
出演:マイケル・グールジャン、ホヴィク・ケウチケリアン

ソ連統治下のアルメニアを舞台に、無実の罪で収監されたアメリカ人男性が、牢獄の小窓から見える部屋に暮らす夫婦を観察することに幸せを見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。

幼い頃にオスマン帝国でのアルメニア人迫害から逃れアメリカに移住したチャーリーは、1948年、自身のルーツを知るため祖国アルメニアを訪れる。そこはソ連統治下にあっても理想の故郷のように思えたが、チャーリーは身に覚えのないスパイ容疑で逮捕・収監されてしまう。悲嘆に暮れるなか、牢獄の小窓から近くのアパートの部屋が見えることに気づいた彼は、そこに暮らす夫婦の生活を観察しはじめる。チャーリーは想像力を研ぎ澄ませ、まるで夫婦と同じ空間にいるかのように彼らと一緒に食事をし、歌を歌い、会話を楽しむようになる。しかし夫婦仲がこじれて部屋には夫だけが残され、時を同じくしてチャーリーのシベリア行きも決まってしまう。移送の日が迫るなか、チャーリーは夫婦を仲直りさせる作戦に乗り出す。

アルメニア系アメリカ人のマイケル・グールジャンが監督・脚本・主演を務めた。ウッドストック映画祭長編映画賞・審査員賞など、世界各地の映画祭で数々の賞を受賞。

刑務所(収容所)のなかで生きがいを見つけつつ時を経るモチーフでは『終身犯』(ジョン・フランケンハイマー監督 1961年)がマスターピースだと信じているが、脱獄を伴わない流れでは本作は近年では秀作だ。ソビエトスターリン政権下の理不尽なアルメニア支配。そこへアメリカから帰国事業で帰ってきてスパイとして逮捕される主人公。という設定が、すでに<世界は狂っている>という証左だろう。ともあれ、収容所の独房の窓から覗く看守夫婦の生活。娑婆との繋がりを精神的に保っていく主人公、それが生きがいとなってしまう異常性に観客は打ちのめされる。

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2025-138M 「IT’S NOT ME イッツ・ノット・ミー」☆☆☆

Sitisnotme原題:C'est pas moi
邦題:IT’S NOT ME イッツ・ノット・ミー
時間:42分
公開:2025-04-26
製作年度:2024
製作国:フランス
配給:ユーロスペース
製作総指揮:
製作:シャルル・ジリベール レオス・カラックス
監督:レオス・カラックス
脚本:レオス・カラックス
原作:
撮影:カロリーヌ・シャンプティエ
音楽:
出演:ドニ・ラヴァン、エカテリーナ・ユスピナ、ナースチャ・ゴルベワ・カラックス、ロレタ・ユオカイテ、アンナ=イザベル・シーフケン、ペトル・アネフスキー、ビアンカ・マッダルーノ、ジュリエット・ビノシュ、ミシェル・ピッコリ、ジャン=フランソワ・バルメ、カテリーナ・ゴルベワ

「アネット」「ホーリー・モーターズ」などの鬼才レオス・カラックスが初めて自ら編集を手がけ、圧倒的なビジュアルセンスで記憶と思考をコラージュしたセルフポートレート映画。

カラックス監督がパリの現代美術館ポンピドゥー・センターからの委任で構想するも、予算が膨らみすぎたため実現しなかった展覧会の代わりとして制作。「いま君はどこにいる?」というポンピドゥー・センターからの問いかけを根源的に捉え直し、自分がどこから来てどこへ行くのかという答えのない謎に、地の底から響くような低い声で口ごもりながら語る。

ジャン=リュック・ゴダール監督の後期のエッセイスタイルへオマージュを込めながら、家族について、映画について、20世紀の独裁者と子どもたちについて、死者たちについて、そして哲学者ベルクソンが提唱した「エラン・ヴィタル(生の飛躍、生命の躍動)」について、ホームビデオから映画、音楽、写真などさまざまなジャンルやフォーマットの映像を、夢の断片のようにコラージュしていく。

ゴダールが晩年は、観客の精神を試すが如くな、メンタルインタレーション的作品を提示し続けた。映像作家として、『自分は何者か?』を観客に問いかけ、宣言する行為を、自由気儘にイメージの洪水によって追求してきた。そして、それを支えるパトロンがい続けた。幸せな生涯だったろう。そんな理想的な作品発表は、近年ではアルノー・デプレシャン監督の「映画を愛する君へ」が記憶に新しい。そこで本作のレオス・カラックス監督作品である。これまたイメージが、大噴火の溶岩のように迸り出る(観客置いてけ堀=独りよがり)の、映像と音楽のコラージュによる自慰的快楽の追求。それも良いだろう。映画監督として、理想的な境地に達しているのだから。この42分間に、きちんと向き合って、付き合ってやろうじゃないか。という心の豊かさを大いに発揮した覚悟を強いられる作品である。

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2025-130M 「異端者の家」☆☆☆

Sitanshanoie原題:Heretic
邦題:異端者の家
時間:111分
公開:2025-04-25
製作年度:2024
製作国:アメリカ・カナダ
配給:ハピネットファントム・スタジオ
製作総指揮:
製作:ステイシー・シェア スコット・ベック ブライアン・ウッズ ジュリア・グラウシ ジャネット・ボルトゥルノ
監督:スコット・ベック ブライアン・ウッズ
脚本:スコット・ベック ブライアン・ウッズ
原作:
撮影:チョン・ジョンフン
音楽:クリス・ベーコン
出演:ヒュー・グラント(ミスター・リード)、ソフィー・サッチャー(シスター・バーンズ)、クロエ・イースト(シスター・パクストン)

ヒュー・グラントが悪役を務め、天才的な頭脳を持つ男が支配する迷宮のような家に足を踏み入れた2人のシスターの運命を描いた脱出サイコスリラー。

若いシスターのパクストンとバーンズは、布教のため森の中の一軒家を訪れる。ドアベルに応じて出てきた優しげな男性リードは妻が在宅中だと話し、2人を家に招き入れる。シスターたちが布教を始めると、リードは「どの宗教も真実とは思えない」と持論を展開。不穏な空気を察した2人は密かに帰ろうとするが、玄関の鍵は閉ざされており、携帯の電波もつながらない。教会から呼び戻されたと嘘をつく2人に、帰るには家の奥にある2つの扉のどちらかから出るしかないとリードは言う。実はその家には、数々の恐ろしい仕掛けが張り巡らされており……。

2人のシスター役に「ブギーマン」のソフィー・サッチャーと「フェイブルマンズ」のクロエ・イースト。「クワイエット・プレイス」の脚本家スコット・ベック&ブライアン・ウッズが監督・脚本を手がけた。「ノッティングヒルの恋人」「ラブ・アクチュアリー」などラブコメ作品で人気を博してきたヒュー・グラントが、イメージを覆す不気味な男を演じ上げ、ゴールデングローブ賞の主演男優賞にノミネートされた。

舞台設定、宗教的会話の論点、リード氏の目的、あらゆるパーツが映画的なケレンで組み立てられており、冷める。早い話がコケ威しの無理矢理作品てこと。

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2025-126M 「アマチュア」☆☆☆★

Samature原題:The Amateur
邦題:アマチュア
時間:123分
公開:2025-04-11
製作年度:2025
製作国:アメリカ
配給:ディズニー
製作総指揮:J・J・フック
製作:ハッチ・パーカー ダン・ウィルソン ラミ・マレック ジョエル・B・マイケルズ
監督:ジェームズ・ホーズ
脚本:ケン・ノーラン ゲイリー・スピネッリ
原作:ロバート・リテル
撮影:マーティン・ルーエ
音楽:フォルカー・ベルテルマン
出演:ラミ・マレック(チャーリー・ヘラー)、ローレンス・フィッシュバーン(ヘンダーソン)、レイチェル・ブロズナハン(サラ)、ケイトリーナ・バルフ(インクワライン)、ジョン・バーンサル(ザ・ベア)

「ボヘミアン・ラプソディ」でアカデミー賞を受賞したラミ・マレックが主演を務め、戦闘や暗殺については素人のCIA職員の男が、殺された妻の復讐に乗り出す姿を描いたアクションサスペンス。

内気な性格で愛妻家のチャーリー・ヘラーは、CIA本部でサイバー捜査官として働いているが、暗殺の経験もないデスクワーカーだ。最愛の妻とともに平穏な日々を過ごしていたが、ある日、無差別テロ事件で妻を失ったことで、彼の人生は様変わりする。テロリストへの復讐を決意したチャーリーは、特殊任務の訓練を受けるが、教官であるヘンダーソンに「お前に人は殺せない」と諭されてしまう。組織の協力も得られない中、チャーリーは彼ならではの方法でテロリストたちを追い詰めていくが、事件の裏には驚くべき陰謀が潜んでいた。

原作は、スパイ小説を多く手がける作家ロバート・リテルの小説。監督はドラマ「窓際のスパイ」や映画「ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命」を手がけてきたジェームズ・ホーズ。主人公チャーリーをラミ・マレックが演じ、上官のヘンダーソン役で「マトリックス」のローレンス・フィッシュバーンが共演。

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2025-123M 「エレクトリック・ステイト」☆☆☆★

Selestate原題:The Electric State
邦題:エレクトリック・ステイト
時間:128分
公開:2025-03-14
製作年度:2025
製作国:アメリカ
配給:Netflix
製作総指揮:クリストファー・マルクス スティーブン・マクフィーリー ティム・コナーズ ニック・バン・ダイク ジェイク・オースト ジェフリー・ヘイリー ジェフリー・フォード シモン・ストーレンハーグ ジュリア・アンジェリン ラッセル・アッカーマン ジョン・シェーンフェルダー アンディ・ムスキエティ バーバラ・ムスキエティ
製作:ジョー・ルッソ アンソニー・ルッソ マイク・ラロッカ アンジェラ・ルッソ=オトストット クリス・カスタルディ パトリック・ニュウォール
監督:アンソニー・ルッソ ジョー・ルッソ
脚本:クリストファー・マルクス スティーブン・マクフィーリー
原作:シモン・ストーレンハーグ
撮影:スティーブン・F・ウィンドン
音楽:アラン・シルベストリ
出演:ミリー・ボビー・ブラウン、クリス・プラット、キー・ホイ・クァン、ジェイソン・アレクサンダー、ウディ・ノーマン、ジャンカルロ・エスポジート、スタンリー・トゥッチ、ウディ・ハレルソンアンソニー・マッキー、ブライアン・コックス、ジェニー・スレイト、ハンク・アザリア、コールマン・ドミンゴ、アラン・テュディック

「アベンジャーズ エンドゲーム」のアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟監督が、シモン・ストーレンハーグの同名グラフィックノベルを原作に、レトロフューチャーな世界観で描いたSFロードムービー。

人類に反旗を翻した自律型ロボットたちが、塀に囲まれた広大な土地「エレクトリック・ステイト」に追放された世界。ロボットは危険な存在という認識のなかで育った孤児の少女ミシェルは、失った弟クリストファーに似た雰囲気をまとうロボットのコスモと出会い、弟がどこかで生きていることを知る。コスモと一緒に弟を捜す旅に出た彼女は、道中で出会った怪しげな密輸業者キーツとその相棒ロボット・ハーマンと行動をともにすることに。やがてミシェルは、ある邪悪な組織が弟の失踪に関わっていることを知る。

「ストレンジャー・シングス 未知の世界」「エノーラ・ホームズの事件簿」のミリー・ボビー・ブラウンがミシェル、クリス・プラットが密輸業者キーツを演じ、キー・ホイ・クァン、ジャンカルロ・エスポジート、スタンリー・トゥッチが共演。アンソニー・マッキー、ウッディ・ハレルソンらがロボットの声を担当。Netflixで2025年3月14日から配信。

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2025-114M 「終わりの鳥」☆☆☆★

Stuesday原題:Tuesday
邦題:終わりの鳥
時間:110分
公開:2025-04-04
製作年度:2024
製作国:イギリス・アメリカ
配給:ハピネットファントム・スタジオ
製作総指揮:エバ・イェーツ ナターシャ・ワートン エリオット・ホイットン フィリップ・エンゲルホーン
製作:イバナ・マッキノン オリバー・ロスキル
監督:ダイナ・O・プスィッチ
脚本:ダイナ・O・プスィッチ
原作:
撮影:アレクシス・サベ
音楽:アンナ・メレディス
出演:ジュリア・ルイス=ドレイファス(ゾラ)、ローラ・ペティクルー(チューズデー)、リア・ハーヴィ(ビリー)、アリンゼ・ケニ(<デス>)

命の終わりを告げる鳥と対峙する母娘を描いた奇想天外なドラマ。クロアチア出身の新鋭ダイナ・O・プスィッチが長編初メガホンをとり、“死”という概念を独創的な映像表現で視覚化。病気の少女とその母親が奇妙な鳥との出会いを通して、間もなく訪れるであろう別れを受け止めていく姿を、ユーモアを交えながら描きだす。

病に侵され余命わずかな15歳の少女チューズデー。母ゾラと暮らす彼女の前に、しゃべって歌う変幻自在な1羽の鳥が舞い降りる。それは地球を周回して生きものに命の終わりを告げる「デス」という名の鳥だった。チューズデーはデスをジョークで笑わせ、外出中のゾラが帰ってくるまで自分の命を引き延ばすことに成功する。やがて帰宅したゾラは鳥の存在に畏れおののき、愛する娘のもとから遠ざけるべく暴挙に出るが……。

「恋人はアンバー」のローラ・ペティクルーがチューズデー、テレビドラマ「Veep ヴィープ」のジュリア・ルイス=ドレイファスが母ゾラを演じた。

シリアスなメタファー作品風なのだが、コメディなのか?ぶっ飛んだ展開に唖然とさせられる。

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2025-108M 「エミリア・ペレス」☆☆☆★

Semiliaperez原題:Emilia Perez
邦題:エミリア・ペレス
時間:133分
公開:2025-03-28
製作年度:2024
製作国:フランス
配給:ギャガ
製作総指揮:ポリーヌ・ラミー
製作:パスカル・コーシュトゥー ジャック・オーディアール バレリー・シェアマン アンソニー・バカレロ
監督:ジャック・オーディアール
脚本:ジャック・オーディアール レア・ミシウス ニコラ・リベッキ トマ・ビデガン
原作:ボリス・ラゾン
撮影:ポール・ギローム
音楽:カミーユ クレモン・デュコル
出演:ゾーイ・サルダナ(リタ)、カルラ・ソフィア・ガスコン(エミリア/マニタス)、セレーナ・ゴメス(ジェシー)、アドリアーナ・パス(エピファニア)、エドガー・ラミレス(グスタボ)、マーク・イヴァニール(ワッセルマン)

「ディーパンの闘い」「君と歩く世界」「預言者」などでフランスを代表する名匠として知られるジャック・オーディアールが手がけ、2024年・第77回カンヌ国際映画祭で審査員賞と4人の俳優が女優賞を受賞した作品。メキシコの麻薬カルテルのボスが過去を捨て、性別適合手術を受けて女性として新たな人生を歩みはじめたことから起こる出来事を、クライム、コメディ、ミュージカルなどさまざまなジャンルを交えて描いた。

メキシコシティの弁護士リタは、麻薬カルテルのボスであるマニタスから「女性としての新たな人生を用意してほしい」という極秘の依頼を受ける。リタは完璧な計画を立て、マニタスが性別適合手術を受けるにあたって生じるさまざまな問題をクリアし、マニタスは無事に過去を捨てて姿を消すことに成功する。それから数年後、イギリスで新たな人生を歩んでいたリタの前に、エミリア・ペレスという女性として生きるマニタスが現れる。それをきっかけに、彼女たちの人生が再び動き出す。

カンヌ国際映画祭ではアドリアーナ・パス、ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、セレーナ・ゴメスの4人が女優賞を受賞。特にエミリア・ペレス/マニタス役を演じたカルラ・ソフィア・ガスコンは、カンヌ国際映画祭において初めてトランスジェンダー俳優として女優賞を受賞した。第97回アカデミー賞でも作品賞や国際長編映画賞をはじめ、非英語作品としては史上最多となる12部門13ノミネートを果たし、助演女優賞(ゾーイ・サルダナ)と主題歌賞の2部門を受賞した。カルラ・ソフィア・ガスコンもトランスジェンダー俳優として初の主演女優賞ノミネートとなった。

相当に今年のアカデミー賞でトリックスター的に評判だった作品。カンヌ映画祭でトランスジェンダーの女優賞で話題になった。
まあ、興味深く観終わったが、以下の感想と理由で、本作は評価できない。
①メキシコは貧富の差もそうだが、およそモラルある法治が存在しない腐った国だ。②トランスジェンダーで女性になって、女性の愛人を作るのが僕には理解不能。③正義の弁護士もギャングと表裏一体かよ!④ミュージカルと言う触れ込みだが、監督にミュージカル演出の資質無いようだ。

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2025-097M 「秋が来るとき」☆☆☆★★

Sakigakurutoki原題:Quand vient l'automne
邦題:秋が来るとき
時間:103分
公開:2025-05-30
製作年度:2024
製作国:フランス
配給:ロングライド、マーチ
製作総指揮:
製作:フランソワ・オゾン
監督:フランソワ・オゾン
脚本:フランソワ・オゾン フィリップ・ピアッツォ
原作:
撮影:ジェローム・アルメーラ
音楽:エフゲニー・ガルペリン サーシャ・ガルペリン
出演:エレーヌ・ヴァンサン、ジョジアーヌ・バラスコ、リュディヴィーヌ・サニエ、ピエール・ロタン

「横浜フランス映画祭 2025」(25年3月20~23日=横浜みなとみらい21地区)上映作品。自然豊かなブルゴーニュで、穏やかな老後を過ごすミシェル。休暇で孫と帰省した娘ヴァレリーがキノコ中毒で病院に運ばれたこときっかけに、登場人物たちの過去や人間模様が紐解かれていく。冒頭の教会の説教「マグダラのマリア」が通奏低音となっている。
オゾン監督らしい、けれんみのある作風ではなく、しっとりと落ち着いたヒューマンドラマに仕上がっている。

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2025-085M 「アークエンジェル」☆☆★★★

Sguy0011090x1536原題:Archangel
邦題:アークエンジェル
時間:78分
公開:2025-03-15(1992-01-31)
製作年度:1990
製作国:カナダ
配給:リスキット
製作総指揮:
製作:
監督:ガイ・マディン
脚本:ガイ・マディン ジョージ・トールズ
原作:
撮影:ガイ・マディン
音楽:ガイ・マディン
出演:ダニエル・クレイグ、エカテリーナ・レドニコワ、ガブリエル・マクト、レフ・プリグノフ

長編デビュー作「ギムリ・ホスピタル」でカルト的人気を集めたカナダの異才ガイ・マディン監督が1990年に手がけた長編第2作。第1次世界大戦末期のロシアを舞台に、ひとりの兵士を中心に繰り広げられる倒錯した愛を、モノクロ・サイレントの表現主義的技法で描きだす。

第1次世界大戦下、革命期のロシア。片足のカナダ人中尉ジョン・ボウルズは、英米が組織した革命干渉軍に参加するため、北極海に近い町アルハンゲリスクにやって来る。他界した元恋人アイリスを忘れられずにいる彼は、アイリスにそっくりなロシア人看護師ヴェロンカに出会い恋をするが、ヴェロンカにはベルギー人パイロットのフィルビンという夫がいた。

マディン監督が脚本・撮影・編集・美術も手がけ、眼帯姿の兵士役で出演。タイトルの「アークエンジェル」は舞台となるアルハンゲリスクの英語名で、「大天使」の意味も持つ。日本では1992年に劇場初公開後、2025年3月に4K版を劇場公開。

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2025-064M 「ANORA アノーラ」☆☆☆★★★

Sanora原題:Anora
邦題:ANORA アノーラ
時間:139分
公開:2025-02-28
製作年度:2024
製作国:アメリカ
配給:ビターズ・エンド
製作総指揮:ショーン・ベイカー アレックス・ココ サマンサ・クァン
製作:
監督:ショーン・ベイカー
脚本:ショーン・ベイカー
原作:
撮影:ドリュー・ダニエルズ
音楽:マシュー・ヒアロン=スミス
出演:マイキー・マディソン(アニー)、マーク・エイデルシュテイン(イヴァン)、ユーリー・ボリソフ(イゴール)、カレン・カラグリアン(トロス)、ヴァチェ・トヴマシアン(ガルニク)

「タンジェリン」「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」「レッド・ロケット」などで高い評価を受けてきたショーン・ベイカー監督が手がけた人間賛歌の物語。ニューヨークを舞台に、若きストリップダンサーのアノーラが、自らの幸せを勝ち取ろうと全力で奮闘する等身大の生きざまを描いた。2024年・第77回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞。第97回アカデミー賞では作品、監督、主演女優、助演男優、脚本、編集と6部門にノミネートされた。

ニューヨークでストリップダンサーをしながら暮らすロシア系アメリカ人のアニーことアノーラは、職場のクラブでロシア人の御曹司イヴァンと出会い、彼がロシアに帰るまでの7日間、1万5000ドルの報酬で「契約彼女」になる。パーティにショッピングにと贅沢三昧の日々を過ごした2人は、休暇の締めくくりにラスベガスの教会で衝動的に結婚する。幸せ絶頂の2人だったが、ロシアにいるイヴァンの両親は、息子が娼婦と結婚したとの噂を聞いて猛反発し、結婚を阻止すべく、屈強な男たちを2人のもとへ送り込んでくる。ほどなくして、イヴァンの両親もロシアから到着するが……。

身分違いの恋という古典的なシンデレラストーリーを、現代風にリアルに映し出す。タイトルロールのアノーラ(通称アニー)を演じるのは、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」や「スクリーム」に出演してきた新星マイキー・マディソン。アノーラに夢中になるお調子者のロシア新興財閥の息子イヴァン役に、ロシアの若手俳優マーク・エイデルシュテイン。

オスカー候補作品。とても面白い脚本。アノーラ役のマイキー・マディソンが相当な気合をこめて熱演している。一見の価値ある映画。18禁。

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