原題:The Testament of Ann Lee
邦題:アン・リー/はじまりの物語
時間:136分
公開:2026-06-05
製作年度:2025
製作国:イギリス
配給:ディズニー
製作総指揮:
製作:アンドリュー・モリソン ジョシュア・ホースフィールド ビクトリア・ペトラニー
監督:モナ・ファストボールド
脚本:モナ・モナ・ファストボールド ブラディ・コーベット
原作:
撮影:ウィリアム・レクサー
音楽:ダニエル・ブルンバーグ
出演:アマンダ・セイフライド、ルイス・プルマン、トーマシン・マッケンジー、ステイシー・マーチン、ティム・ブレイク・ネルソン、クリストファー・アボット、マシュー・ビアード、スコット・ハンディ
18世紀に「シェーカー教団」と呼ばれるユートピアを築いた実在の宗教指導者アン・リーの波乱万丈な人生を、「マンマ・ミーア!」「レ・ミゼラブル」のアマンダ・セイフライド主演で映画化した伝記ミュージカル。
18世紀のイギリスで、貧しい鍛治職人の家に生まれたアン。信仰心の厚い女性として育った彼女は、4人の子どもを授かるも全員を亡くすという悲痛な体験を経て、自らが「キリストの女性の姿の生まれ変わり」だという啓示を得る。性別や人種の平等を説く彼女の生き方は多くの人々をひきつけるが、その一方で反感や警戒を感じる勢力から迫害を受けるようになる。やがて彼女はわずか8人の信徒とともにアメリカへ渡り、性別・人種の平等信仰をもとにした理想の生活を実現するユートピアを求めるが、その先にも困難が待ち受けていた。
共演は「トップガン マーヴェリック」のルイス・プルマン、「ラストナイト・イン・ソーホー」のトーマシン・マッケンジー。「ブルータリスト」でパートナーのブラディ・コーベット監督とともに脚本を手がけたモナ・ファストボールドが監督を務め、ファストボールド監督とコーベットが共同で脚本を担当。2025年・第82回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。
絶望の果ての「聖性」を問う ―― 『教祖誕生の軌跡』
既存のキリスト教から派生し、時にカルトとも目された新興宗教。その「教祖誕生」のプロセスを真正面から描き切った本作の筆致には、凄まじい執念が宿っています。主演のアマンダ・セイフライドが、これまでのイメージを覆す体当たりの演技で、一人の女性が信仰の深淵へと堕ちていく(あるいは昇っていく)様を演じている点も見逃せません。
エンドロールによれば、この教団の信者は2025年現在、わずか2名。伝道としてのメリットが皆無に等しいこの題材を、製作者があえて選んだのは、そこに映画的な「何か」を見出したからに他ならないでしょう。
アン・リーの波乱万丈な半生を辿る中で、戸惑いを禁じ得ません。彼女が掲げる「シェイカー」の教義はあまりに峻厳で、現代の価値観では共感の範疇を超えているからです。
しかし、もし彼女が4人の子供を失っていなければ――。そんな仮定を抱かずにはいられません。彼女は平凡な鍛冶屋の妻として生涯を終え、この宗教がアメリカへ渡ることも、それに関わった多くの人々の運命が塗り替えられることもなかったはずです。
一人の女性の個人的な悲劇が、奇妙な信仰へと昇華され、やがて一つの歴史を形作っていく。その「バタフライ・エフェクト」の数々を目の当たりにするとき、私たちは信仰の本質的な危うさと、人間の生の不可思議さを突きつけられるのです。