2023-085M 「死体の人」☆☆☆★
邦題:死体の人
時間:94分
公開:2023-03-17
製作年度:2022
製作国:日本
配給:ラビットハウス
製作総指揮:
製作:長坂信人
監督:草苅勲
脚本:草苅勲 渋谷悠
原作:
撮影:勝亦祐嗣
音楽:沼口健二 足立知謙
出演:奥野瑛太(吉田広志)、唐田えりか(加奈)、楽駆(翔太)、田村健太郎(東郷)、岩瀬亮(高橋)、烏丸せつこ(吉田広志の母)、きたろう(吉田広志の父)
死体役ばかりの売れない役者に訪れた運命の出会いを通し、生きることと死ぬことをユーモアとペーソスを交えて描いた人間ドラマ。
役者を志していたのに、気づけば死体役ばかり演じるようになっていた吉田広志。後輩俳優は要領よくテレビで活躍しているが彼にはそれができず、リアルな死体の演じ方を探求する日々を送っていた。ある日、彼はデリヘル嬢の加奈と運命的な出会いをする。明るく振る舞う加奈だったが、彼女もまた自分の人生に問題を抱えていた。そんな中、吉田のもとに母が入院するという報せが入る。
「まだ存在しない映画の予告編」を審査する映像コンテスト「未完成映画予告編大賞 MI-CAN3.5 復活祭」の最優秀作品を映画化。「SR サイタマノラッパー」シリーズの奥野瑛太が主演を務め、「寝ても覚めても」の唐田えりかがヒロイン・加奈を演じた。
映画のモチーフに、役者の哀愁や諦観や役者魂や人生を背負っての『斬られ役』を主人公にしたものがある。そして「蒲田行進曲」(1982年 原作:つかこうへい 監督:深作欣二)の平田満演じるヤスのように、映画史に残る斬られ役も誕生している。まあこの種の役者が注目され始めたのは、同じ深作欣二監督の大ヒットシリーズ「仁義なき戦い」における、大部屋俳優だった川谷拓三や室田日出男らの〈殺され役〉で売り出した、ピラニア軍団あたりからか。
そんなモチーフから一歩進んで『死体の役専門』という役者を主人公にした『まだ存在しない映画の予告編』のコンテスト最優秀賞を獲得したことで、本編を制作することになった、相当に屈折し倒錯した産まれ方をしている。とはいえ、奇をてらわずに平凡とも言えるボーイミーツガールもの。受賞がなければ、おそらく本編の企画やシノプシスだけでは、制作にはゴーが出なかったろうと想像できる。
とはいえ、真面目にシナリオを書き起こし、それぞれの役柄を一所懸命に演じているキャスト、それを描く演出には好感がもてる。特筆すべきは、美術・装飾・小道具が素晴らしい仕事をしているところだ。草苅勲監督のこだわりもあるかもしれないが、主人公のアパートの部屋の道具や装飾は、相当に細かなディテールまで拘って作り込んでいるのが見て取れる。また、ヒロイン加奈がヒモと同棲している部屋の装飾も同様だ。もしアカデミーの投票権があれば、今年の美術賞にノミネート投票したいくらいだ。
作品として残念なのは、主人公が説明無く病気療養をしているクライマックス。あまりに唐突すぎて、繋がりをつくる工夫は無かったのかと思う。上映時間の問題でカットしたか、撮影はしたもののデータに瑕疵があったのか。そこだけ疑問である。映画は『省略の芸術』といわれるが、省略しすぎだ。
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