2023-082M 「ウーマン・トーキング 私たちの選択」☆☆☆★
原題:Women Talking
邦題:ウーマン・トーキング 私たちの選択
時間:105分
公開:2023-06-02
製作年度:2022
製作国:アメリカ
配給:パルコ
製作総指揮:ブラッド・ピット リン・ルチベッロ=ブランカテッラ エミリー・ジェイド・フォーリー
製作:デデ・ガードナー ジェレミー・クライナー フランシス・マクドーマンド
監督:サラ・ポーリー
脚本:サラ・ポーリー
原作:ミリアム・トウズ
撮影:
音楽:ヒルドゥル・グーナドッティル
出演:ルーニー・マーラ、クレア・フォイ、ジェシー・バックリー、ベン・ウィショー、フランシス・マクドーマンド
「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」「テイク・ディス・ワルツ」など近年は監督として手腕を発揮するサラ・ポーリーが、架空の村を舞台に性被害にあった女性たちが、自らの未来のために話し合いを重ねていく姿を描いたドラマ。
2010年、自給自足で生活するキリスト教一派のとある村で、女たちがたびたびレイプされる。男たちには、それは「悪魔の仕業」「作り話」だと言われ、レイプを否定されてきた。やがて女たちは、それが悪魔の仕業や作り話などではなく、実際に犯罪だったということを知る。男たちが街へと出かけて不在にしている2日間、女たちは自らの未来を懸けた話し合いを行う。
原作は、2005年から2009年にかけて南米ボリビアで実際にあった事件をもとに執筆され、2018年に出版されてベストセラーとなったミリアム・トウズの小説。主演は「キャロル」のルーニー・マーラ。クレア・フォイ、ジェシー・バックリー、ベン・ウィショーらが共演し、「ノマドランド」「スリー・ビルボード」のオスカー女優フランシス・マクドーマンドがプロデューサーを務め、出演もしている。第95回アカデミー賞では作品賞と脚色賞にノミネートされ、脚色賞を受賞した。
今年のアカデミー賞で脚色賞オスカーを獲得した作品。
文明を拒絶しキリスト教の原理主義的なコミュニティ。そこで発覚するレイプ事件に女性たちが立ち上がる。という話だが、なにせ設定された環境が異常。とはいえ実際に2005年ごろボリビアで実際にあった事件をヒントに原作小説が書かれているという。
こういった文明を排除しているコミュニティでは、スイスやドイツの移民が中心となったアーミッシュが思い起こされる。そんな閉鎖空間を題材にホラー的に描いた作品に「ヴィレッジ」(2004年 M・ナイト・シャマラン監督)が思い起こされる。ただ「ヴィレッジ」は現代文明の存在を知らないという前提。さらに宗教に特化してみると、フィールドワークの学生たちが迷い込む狂気の宗教コミュニティが舞台の悲劇「ミッドサマー」(2019年 アリ・アスター監督)が話題になった。宗教ではなく、社会システムが南部奴隷制の農場というコミュニティに、女性弁護士が拉致されて白人に暴行の限りを尽くされるという「アンテベラム」(2020年 ジェラルド・ブッシュ監督、クリストファー・レンツ監督)という胸糞な作品もあった。
閉鎖空間で住民が<その状況が悲惨であることを知らずに>規則正しく生活しているが、ある時その悲惨であるという真実に目覚めて脱出をはかるという作品を思い出していこう。
まずはフランク・ヴェデキントの小説『ミネハハ』を映画化した「エコール」(2004年 ルシール・アザリロビック監督)や「ミネハハ 秘密の森の少女たち」(2005年 ジョン・アーヴィン監督)が思い出される。閉ざされた森の学校でダンスと音楽を学びながら、集団生活を営む少女たちが、ある年齢になると愛玩物として出荷されていく物語。
そんな閉鎖学校的な環境を共学にしてアニメ化したのが「約束のネバーランド」だ。(第二シーズンからは世界観が変化している)。同様に、自分たちが何故ここで育まれているかを知らずに成長している少年少女を描いた作品にカズオイシグロの小説「わたしを離さないで」がある。マーク・ロマネク監督によって2010年に映画化され、女優キャリー・マリガンの代表作でもある。この作品の少年少女たちは、オリジナルへ拒絶反応のない臓器提供をするために作られたDNAクローン人間で、しかし彼らも恋をしてしまう切ない物語だった。
さあ、そこで本作の立場だ。現代のジェンダー問題を凝縮したような状況で、女性たちが立ち上がる。しかしその過程にさまざまな議論が戦わされる。女性権利のありかたの歴史をたどるような議論がすすんで、彼女たちの出した結論は「自立」=「男を捨て去る」。フランシス・マクドーマンドが製作にかかわり、出演し、クライマックスに彼女が演じたキャラクターが選択した結論をどう解釈するか。いかにもプランBの作品らしいな。
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