2023-046M 「バビロン」☆☆☆★★★
原題:Babylon
邦題:バビロン
時間:189分
公開:2023-02-10
製作年度:2022
製作国:アメリカ
配給:東和ピクチャーズ
製作総指揮:マイケル・ビューグ トビー・マグワイア ウィク・ゴッドフリー ヘレン・エスタブルック アダム・シーゲル ジェイソン・クロス デイブ・キャプラン
製作:マーク・プラット マシュー・プルーフ オリビア・ハミルトン
監督:デイミアン・チャゼル
脚本:デイミアン・チャゼル
原作:
撮影:リヌス・サンドグレン
音楽:ジャスティン・ハーウィッツ
出演:ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、ディエゴ・カルバ、ジーン・スマート、ジョヴァン・アデポ、リー・ジュン・リー、P・J・バーン、ルーカス・ハース、オリヴィア・ハミルトン、トビー・マグワイア、マックス・ミンゲラ、ローリー・スコーヴェル、キャサリン・ウォーターストン、フリー、ジェフ・ガーリン、エリック・ロバーツ、イーサン・サプリー、サマラ・ウィーヴィング、オリヴィア・ワイルド
「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督が、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビーら豪華キャストを迎え、1920年代のハリウッド黄金時代を舞台に撮り上げたドラマ。チャゼル監督がオリジナル脚本を手がけ、ゴージャスでクレイジーな映画業界で夢をかなえようとする男女の運命を描く。
夢を抱いてハリウッドへやって来た青年マニーと、彼と意気投合した新進女優ネリー。サイレント映画で業界を牽引してきた大物ジャックとの出会いにより、彼らの運命は大きく動き出す。恐れ知らずで美しいネリーは多くの人々を魅了し、スターの階段を駆け上がっていく。やがて、トーキー映画の革命の波が業界に押し寄せ……。
共演には「スパイダーマン」シリーズのトビー・マグワイア、「レディ・オア・ノット」のサマラ・ウィービング、監督としても活躍するオリビア・ワイルド、ロックバンド「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」のフリーら多彩な顔ぶれが集結。「ラ・ラ・ランド」のジャスティン・ハーウィッツが音楽を手がけた。
かくも「映画」というものは愛しいものなのだろうか。デミアン・チャゼル監督の眼差しは<創造するものたちへの限りない愛>に溢れ、狂乱の20年代ハリウッドを、このうえなく魅力的な祝祭空間として描いた。サイレントからトーキーへの移り変わりの悲喜こもごもは、これまで様々な映画作品でモチーフとされてきたものの、それは高みから見下ろして語る歴史であった。しかしこの『バビロン』は血を流し苦悩する、虚飾に生きるしかない<映画屋>の物語。時代から取り残される役者というのは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(クエンティン・タランティーノ監督 2019年)で70年代に落ちぶれた往年の西部劇俳優をディカプリオが演じ、その友人でありダブルであるブラピが**を**してマルチバースなハリウッド史を表現していたのが記憶に新しい。ともあれ、トーキーに対応できなかった様々な人々と、生き残り切れなかった有象無象が、悲しくも消え去っていく残酷なら必然。しかし、連綿と続く「映画」という夢の世界は、そんな者たちさえ<歴史の一部>として現在まで続いているという、チャゼル監督の鎮魂の物語である。
冒頭の30分近く描かれる、狂乱淫靡な即物的享楽だけが<正義>であったギョーカイに、破裂しそうな野心を持ってチャンスを得ようと潜入する主人公たちに、189分続く悦楽を鷲掴みされる。そしてラスト10分の、130年にわたる映画史に残る古今の名作が、眩暈を呼び起こすフラッシュカットで提示される。これらの編集はチャゼル組のトム・クロス。16ビートの疾走する勢いで、作品全編の緩急自在なリズムと、冒頭の狂乱とクライマックスの映画史で観客の血圧をぐいぐい押し上げる。
まことに映画という愉悦に浸らせてくれる、見事なお点前であった。
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