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2019-154M 「ジョーカー」☆☆☆★★★

Joker原題:Joker
邦題:ジョーカー
時間:122分
公開:2019-10-04
製作年度:2019
製作国:アメリカ
配給:ワーナー・ブラザース映画
製作総指揮:マイケル・E・ウスラン ウォルター・ハマダ アーロン・L・ギルバート ジョセフ・ガーナー リチャード・バラッタ ブルース・バーマン
製作:トッド・フィリップス ブラッドリー・クーパー エマ・ティリンガー・コスコフ
監督:トッド・フィリップス
脚本:トッド・フィリップス スコット・シルバー
原作:
撮影:ローレンス・シャー
音楽:ヒドゥル・グドナドッティル
出演:ホアキン・フェニックス(アーサー・フレック)、ロバート・デ・ニーロ(マレー・フランクリン)、ザジー・ビーツ(ソフィー・デュモンド)、フランセス・コンロイ(ペニー・フレック)

「バットマン」の悪役として広く知られるジョーカーの誕生秘話を、ホアキン・フェニックス主演&トッド・フィリップス監督で映画化。道化師のメイクを施し、恐るべき狂気で人々を恐怖に陥れる悪のカリスマが、いかにして誕生したのか。原作のDCコミックスにはない映画オリジナルのストーリーで描く。「どんな時でも笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸に、大都会で大道芸人として生きるアーサー。しかし、コメディアンとして世界に笑顔を届けようとしていたはずのひとりの男は、やがて狂気あふれる悪へと変貌していく。これまでジャック・ニコルソン、ヒース・レジャー、ジャレット・レトが演じてきたジョーカーを、「ザ・マスター」のホアキン・フェニックスが新たに演じ、名優ロバート・デ・ニーロが共演。「ハングオーバー!」シリーズなどコメディ作品で手腕を発揮してきたトッド・フィリップスがメガホンをとった。第79回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品され、DCコミックスの映画化作品としては史上初めて、最高賞の金獅子賞を受賞した。

1989年のジャック・ニコルソン、2008年の「ダークナイト」でのヒース・レジャー。個性派俳優がキャスティングされてきた、バットマンの最強の敵となるジョーカーがフューチャーされた話題作だ。トランプのジョーカーのピエロビジュアルを参考にして創造され、コミックのスタートともに登場した狂気の犯罪大魔王だ。  たかだか200年ほどの歴史しかないアメリカという若い国では、風土的・歴史的な「恐怖」の対象は、平安時代の「妖」のように1200年かけて遺伝子に刻み込まれてきたような原初的・幽玄的な存在を持たない。そういう点で、しょせんDCコミックの敵役にすぎないサイコパスキャラクターを恐怖の対象とするしかないのだろう。アメリカ映画における様々な恐怖対象は、科学的・合理的な説明を背景に語られる(説明される)サイコキラーが多く、サイコパスであるが故に理不尽な理由で電動のこぎりを振り回したり、ロッジの客を殺戮したりしていくのだ。せいぜい人形や動物やタイヤが人を襲うというデーモン系な説明をバックグラウンドに呪いや復讐を(キリスト教的な意味を内包しつつ)投影していくか、あとはエイリアンだけだ。アメリカでは「鬼太郎」のようなキャラクターの発想は生まれようがないと言えるだろう。  ともあれ「ジョーカー」である。企画の発想としては「ジョーカー・ビギニング」であるし、この希代のトリックスターであるジョーカーが、どう誕生してきたのかを描くのが主眼である。そこへホアキン・フェニックスという一種の狂気を秘めた性格俳優をキャスティングしたことが本作のすべてだろう。鬼気迫るホアキンの演技に息苦しささえ覚えるドラマは、まさにジョーカーが世の中から排除され、疎まれ、ネグレクトされることで至高の犯罪者へとエヴォリューションしていく姿を描いていく。世界を憎悪しなければならないように追い詰められていくホアキン=ジョーカーが苦悩する舞台はバットマンのゴッサム・シティ。後にバットマンとなるブルース・ウェインはまだ幼い少年にすぎない時代だ。ジョーカーの誕生そのものが、実はバットマンの誕生の理由でもあるという暗喩も含め、裏側から見た(合わせ鏡的)な帰納法で語られたバットマン映画なのだ。  ホアキンによるとラストシーンは7パターン撮影したという。本作のラストシーンにどんな解釈ができるか、おそらく映画評の世界では議論が高まりそうだ。僕は、これはこれでいいと思う。そこには見えないスーパーで「continue」と書かれているに違いないから。映画的にではなく、主人公ジョーカーの悲しき宿命において。  

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