2019-113M 「ゴールデン・リバー」☆☆☆★★
原題:The Sisters Brothers
邦題:ゴールデン・リバー
時間:120分
公開:2019-07-05
製作年度:2018
製作国:アメリカ・フランス・ルーマニア・スペイン
配給:ギャガ
製作総指揮:ミーガン・エリソン、チェルシー・バーナード、サミー・シャー
製作:パスカル・コーシュトゥー、グレゴワール・ソルワ、ミヒェル・メルクト、マイケル・デ・ルカ、アリソン・ディッキー、ジョン・C・ライリー
監督:ジャック・オーディアール
脚本:ジャック・オーディアール、トーマス・ビデガン
原作:パトリック・デウィット
撮影:ブノワ・デビエ
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演:ジョン・C・ライリー(イーライ・シスターズ)、ホアキン・フェニックス(チャーリー・シスターズ)、ジェイク・ギレンホール(ジョン・モリス)、リズ・アーメッド(ハーマン・カーミット・ウォーム)、レベッカ・ルート(メイフィールド)、アリソン・トルマン(酒場の女)、ルトガー・ハウアー(提督)、キャロル・ケイン(ミセス・シスターズ)
「ディーパンの闘い」「君と歩く世界」「真夜中のピアニスト」などで知られるフランスの名匠ジャック・オーディアール監督が初めて手がけた英語劇で、ジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックス、ジェイク・ギレンホール、リズ・アーメッドという豪華キャストを迎えて描いた西部劇サスペンス。2018年・第75回ベネチア国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞した。ゴールドラッシュに沸く1851年、最強と呼ばれる殺し屋兄弟の兄イーライと弟チャーリーは、政府からの内密の依頼を受けて、黄金を探す化学式を発見したという化学者を追うことになる。政府との連絡係を務める男とともに化学者を追う兄弟だったが、ともに黄金に魅せられた男たちは、成り行きから手を組むことに。しかし、本来は組むはずのなかった4人が行動をともにしたことから、それぞれの思惑が交錯し、疑惑や友情などさまざまな感情が入り乱れていく。
その深い知識と分析力、加えて素晴らしい文章表現力によって文武両道を証明する母校体育教師のI田君が、ひとこと「傑作」としか書かないほど打ちのめされたらしい作品を、遅ればせながら観た。彼の評価を信じたからだ。残念ながら僕は打ちのめされるまでは行かなかったが、ジワジワくる佳作西部劇だと認める。しかもフランス製だってことが驚愕だ(もちろんアメリカ資本も入ってるけど、あとはルーマニア・スペイン!だぜ)。
ハワード・ホークスとフランス映画は呪縛というか、ヌーベルバーグのトラウマ。ヌーベルバーグの映画理論的支柱だった「カイエ・デュ・シネマ」誌でヒッチコックとともにホークスを称揚していったのは有名だ。
ベルトルッチが2003年に発表した自伝的映画「ドリーマーズ」はパリの五月革命(1968年)を背景に、若きシネフィルたちを主人公にした切なさ満点の名作だが、彼らが通うシネマテーク・フランセーズらしきスクリーンでホークス作品を見るシーンがあったような、なかったような・・・。
ともあれ、1952年生まれの本作のジャック・オーディアール監督は家庭環境的にも、十分その空気を体験しただろうし(父親が脚本家のミシェル・オーディアール。「地下室のメロディ」《アンリ・ベルヌイユ監督 1963年》などに参加)、五月革命の年には16歳という多感な少年時代だったはずだったことを前提に観る作品だろう。
原題はSisters Brothers.「シスター家の兄弟」てなことだが、直訳だと邦題には困るだろう。まあ「ゴールデン・リバー」で許そう。ホークス監督の初の西部劇でジョン・ウェイン主演の名作「赤い河」(原題・Red River)への目配せなのかリスペクトなのか。おっとここでもホークスの呪縛かな。本作監督でジャック・オーディアールは2018年のベルリン映画祭の最優秀監督賞を受賞(銀獅子賞)という栄光に輝いている。
性格の違う兄弟が目的に向かっていくバディ&ロードムービー。というと「レインマン」を想起してしまうが、こちらは全く女っ気が無い。物語は殺し屋を営んでいる、生真面目な兄イーライと何をしでかすかわからない弟チャーリーの二人がある依頼を受けることから始まる。ああ、これ以上書けない。まあタイトルに匂わせているようにゴールドラッシュに纏わる追跡ものとだけ言っておこう。
撮影監督は、フランク・ヴェーデキントの小説「ミネハハ」を映画化した「エコール」(ルシール・アザリロヴィック監督 2004年)で、森の中の寄宿舎に住む少女たちを幻想的に描き切ったブノワ・デビエ。カメラは短焦点レンズを多用しているようで、タイトなショットの切り替えしが多い。狙いなのかどうかは判らないが、西部劇を観る客としてはスケールのある広大な荒野のショットで抒情的に描いたカットが少なすぎる欲求不満が残る。
立て続けに西部劇を2本観たが、このジャンルでビジネスになるのかという疑問がある。本作はフレンチウェスタンだし、ベルリン映画祭だし、アメリカの興業はディズニー&マーベルでないと映画じゃない的な様相だし。オーソドックスな西部劇が製作されることに奇跡を感じる。もちろん、小さなバジェットで軽量に稼ぐことは可能だろうが、それなりに規模あるビジネスともなると西部劇に資金を投じる金主がいるのだろうか、と思ってしまう。
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