春との旅 ☆☆☆★★★
邦題:春との旅
時間:125分
公開:2010-05-22
製作年度:2010
製作国:日本
配給:ティ・ジョイ=アスミック・エース
製作総指揮:
製作:紀伊宗之、小林直子
監督:小林政広
脚本:小林政広
原作:小林政広
撮影:高間賢治
音楽:佐久間順平
出演:仲代達矢、徳永えり、大滝秀治、菅井きん、小林薫、田中裕子、淡島千景、長尾奈奈、柄本明、美保純、戸田菜穂、香川照之
ピンクあがりで理屈っぽく作家性を前面に出していくという芸風の監督がそれなりに存在するんだけど、小林監督もそう。で、出来の落差が極端だけど 「個性」という点では十分評価できるんで、海外の映画祭で注目されたりもしている。そんな小林が王道の「日本映画」を作ってしまった。これは落差でいえば ピン。大当たりな方。奇跡のような映画になってしまっている。原作はともかく脚本、監督と独り舞台の作品に、プロデューサーが物凄いキャスティング力を発 揮している。あらゆる登場人物が見事なはまり役で、しかも全員が存在感たっぷりな演技力の持ち主たち。その脇役たちを訪ね歩く仲代達矢と徳永えりの祖父孫 娘の二人のロードムービー。ほぼワンシーンワンカットにちかい据えた長回しのカメラ前での長尺の演技を丁々発止で演じる役者たち。カメラが動かず、カット も変わらないため、異様な緊張感のあるスクリーンに息が詰まってくるあたりで、手持ちカメラでホテルを探す徳永をドキュメンタリー風に追う画面の疾走。そ して再び静謐なフィックス画面いっぱいの二人のアップでの延々と続く台詞芝居。現在の日本映画には珍しい「映像的実験性」が堪能できるし、成功している。 それを支えてるのは演出力を増幅する俳優たちの驚くべき演技力なんだけどね。ラスト近くで娘は母と離婚して自分を捨てた父(香川)との対話。このシーンは 父のアップと娘のアップをイマジナリーラインを曖昧にしながら描いていく。二人の位置関係も曖昧。その曖昧さが父と娘のわだかまりであり、父母の離婚の原 因について娘が「溜まってたものを吐き出す」というクライマックスで初めて二人の位置関係を明らかにし、その位置を父が移動していくという心理描写のお手 本のような演出をしている。小林監督がやりたいことをやったような作品なんだろうけど、その作品に血肉を与え、名作にまで高めたのは、出演陣であることは 断言できる。もちろん、2010年の作品賞や監督賞、主演男優や主演女優といったノミネートは確実と思われるけど、キャスティング賞っていうのがあった ら、決定だと思う。ないけど。
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