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あるいは裏切りという名の犬 2006-12-28

Aruihauagiritoiunanoinu原題:36 QUAI DES ORFEVRES
邦題:あるいは裏切りという名の犬
時間:110分
公開:2006-12-16
製作年度:2004
製作国:フランス
配給:アスミックエース
製作総指揮:ユグー・ダルモワ
製作:フランク・ショロ、シリル・コルボー=ジュスタン、ジャン=バティスト・デュポン 
監督:オリヴィエ・マルシャル
脚本:オリヴィエ・マルシャル 、フランク・マンクーゾ 、ジュリアン・ラプノー
原作:
撮影:ドゥニ・ルーダン
音楽:アクセル・ルノワール 、エルワン・クルモルヴァン
出演:ダニエル・オートゥイユ 、ジェラール・ドパルデュー 、アンドレ・デュソリエ 、ヴァレリア・ゴリノ 、ロシュディ・ゼム 、ダニエル・デュヴァル 、ミレーヌ・ドモンジョ 、フランシス・ルノー 、カトリーヌ・マルシャル 、ソレーヌ・ビアシュ 、オーロル・オートゥイユ 、オリヴィエ・マルシャル 、アラン・フィグラルツ

びっくり。テアトル銀座が満席なんだもの。29日の4時半の回だから、そんなに混んでないわよね、って松屋で寄り道して行ったら座席の残りが50席。あっという間に50席もはけるからビックリ。そんなに評判がいいのかしら、って思いっきり期待しちゃった。客層は幅広いし。メルヴィルやベルヌイユが支えていたフランスのフィルムノワールが復活!なんてイメージの宣伝や予告。ちょっとオジサン系が多い映画かなって想像してたら女性客も半分くらいいたし。誰のファンなんだろう。それはさておき、そんな重厚なフィルム・ノワールを期待したら、単なるパリ警察署の派閥争いもの。トップを狙う「生き方が違う」同期のライバルが、ある事件を解決したらご褒美に出世できる、っていうことで競う話。なんか企業におきかえて30年位前に日本でコメディタッチでつくると「サラリーマンだよ若大将」みたいな感じかしら。フランスのギャバンからの系譜を引く「肉厚のおっさん」風な人気俳優が競演ってこともあるし、フランス語のホワンホワンしたセリフの語感も「良質な映画を観てる」錯覚に陥れるし、馬鹿なベッソンメジャーじゃないし、ということで集客してるのかしら。この程度なら「仁義なき戦い・頂上作戦」のほうが100倍おもしろいと思うんだけど。

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麦の穂をゆらす風 2006-12-28

Windthatshakesthebarley原題:THE WIND THAT SHAKES THE BARLEY
邦題:麦の穂をゆらす風
時間:126分
公開:2006-11-18
製作年度:2006
製作国:イギリス/アイルランド/ドイツ/イタリア/スペイン
配給:シネカノン
製作総指揮:アンドリュー・ロウ 、ナイジェル・トーマス 、ウルリッヒ・フェルスベルク 、ポール・トリビッツ
製作:レベッカ・オブライエン
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァーティ
原作:
撮影:バリー・アクロイド
音楽:ジョージ・フェントン
出演:キリアン・マーフィ 、ポードリック・ディレーニー 、リーアム・カニンガム 、オーラ・フィッツジェラルド 、メアリー・オリオーダン 、メアリー・マーフィ 、ローレンス・バリー 、ダミアン・カーニー 、マイルス・ホーガン 、マーティン・ルーシー 、ジェラルド・カーニー 、ロジャー・アラム 、ウィリアム・ルアン

ケン・ローチ監督がカンヌパルムドールを受賞した作品。痛い映画。最近のカンヌってわりと製作国のお国柄がきちんと表現できてると受賞しやすいわけ。イラン映画とか中国映画とか。たとえば欧米(死語から復活)作品でも「華氏911」みたいにアメリカっぽい演出でアメリカそのものを描くみたいに判りやすいのはいいんだけど、日本人にとっちゃ「ヨーロッパ」でひとくくりしちゃって区別不能なベルギーやアイルランドともなると、どこがお国柄なの?って途方にくれるわけよね。「チャイルド(ランファン)」なんか完全にそうだったもの。でこの作品。アイルランド独立にまつわるテロと独立後の内紛の物語。暴力が暴力を生むっていうか、昨日まで正義だった暴力が、今日は反政府テロの暴力として認識されて、昨日の戦友が今日は死刑囚と死刑執行人になってしまう。しかも兄弟。なんて話で、このあたりはカンヌが好きな「お国柄」なのね、きっと。アイルランドっていうエリアの。実際はIRAの生まれる歴史的背景をゴミのように潰されていく青春を描くことによって「自己矛盾する大義」を批判しているんじゃないかなって思うんだけど。

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大奥 2006-12-28

Oooku2006邦題:大奥
時間:126分
公開:2006-12-23
製作年度:2006
製作国:日本
配給:東映・フジテレビ
製作総指揮:
製作:亀山千広、坂上順 
監督:林徹
脚本:浅野妙子
原作:
撮影:
音楽:石田勝範
出演:仲間由紀恵 、西島秀俊 、井川遥 、及川光博 、杉田かおる 、麻生祐未 、中山忍 、木村多江 、北村一輝 、鷲尾真知子 、山口香緒里 、久保田磨希 、浅野ゆう子 、松下由樹 、柳葉敏郎 、藤田まこと 、岸谷五朗 、高島礼子

絵島事件を軸に大奥を描く、っていう大言壮語。実は絢爛豪華な眼福をどうぞっていうお金をかけた「隠し芸大会」にすぎないバラエティドラマ。なんとも、このレベルの「時代劇」が近来稀なる超大作時代劇としてヒットさせられてしまうわけで、日本の映画観客をどんどん白痴化させてるって断言できる。ビジネスだけしか考えてないフジテレビ系映画に東映が三顧の礼を尽くして(想像だけど)東宝だけじゃなくてこっちにもお情けを頂戴っていう「フジ系映画をゲット!」な欣喜雀躍が物悲しい。ハリウッドメジャー以上に「思想皆無」なフジテレビ映画もここまで傲慢に「とにかく作ってやるから喜んで食え」みたいな犬にクズ肉を放るような作品提供には「日本の映画文化を崩壊させるA級戦犯」の名誉ある称号を授与してあげるわ。

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雨月物語 2006-12-27

Ugetsumonogatari邦題:雨月物語
時間:97分
公開:1953-03-26
製作年度:1953
製作国:日本
配給:大映
製作総指揮:
製作:永田雅一
監督:溝口健二
脚本:川口松太郎 、依田義賢
原作:上田秋成
撮影:宮川一夫
音楽:早坂文雄
出演:京マチ子 、水戸光子 、田中絹代 、森雅之 、小沢栄太郎 、青山杉作 、羅門光三郎 、香川良介 、上田吉二郎 、毛利菊枝 、南部彰三 、光岡龍三郎 、天野一郎 、尾上栄五郎 、伊達三郎 、沢村市三郎 、村田宏二 、横山文彦 、玉置一恵 、藤川準 、福井隆次 、菊野昌代士 、大美輝子 、小柳圭子

溝口健二監督作品をしばらく観てきてるけど、映画としての完成度は一番あるかもしれない。「赤線地帯」も良い作品なんだけど、現代劇だし公開年度的には「いままさに渦中の話題」から掘り起こしたリアリズムを追う分だけ社会性っていう要素が加わってきてる。でもこの「雨月物語」は戦国時代という時代設定で怨霊に取り付かれる男っていうホラーファンタジー。人間の欲と夢と現実とが錯綜して主人公たちのストーリーが屈折して悲劇へ結果していくの。それが溝口健二監督や宮川一夫カメラマンの緻密な構図と演出で、「映画らしい映画」として心に響くドラマに仕上がってる。

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flor-花-  2006-12-26

Florhana演目 flor-花-
作・演出 井上恵美子ダンスカンパニー
劇場 スペース・ゼロ

ストーリーやテーマを言葉を使わずにダンスだけ、群舞や井上さんのソロだけで描く。やっぱり難解だわ。ある程度の「語られるはずの内容」っていう前知識がなければね。わたしは残念ながらそこまで敏感に繊細じゃないもの。でもクライマックスのラインは綺麗だったわ。

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犬神家の一族 2006-12-26

Inugamike2006邦題:犬神家の一族
時間:135分
公開:2006-12-16
製作年度:2006
製作国:日本
配給:東宝
製作総指揮:
製作:黒井和男
監督:市川崑
脚本:市川崑 、日高真也 、長田紀生
原作:横溝正史
撮影:五十畑幸勇
音楽:谷川賢作
出演:石坂浩二 、松嶋菜々子 、尾上菊之助[5代目] 、富司純子 、松坂慶子 、萬田久子 、葛山信吾 、池内万作 、螢雪次朗 、永澤俊矢 、石倉三郎 、尾藤イサオ 、嶋田豪 、三條美紀 、松本美奈子 、林家木久蔵 、三谷幸喜 、深田恭子 、奥菜恵 、岸部一徳 、大滝秀治 、草笛光子 、中村玉緒 、加藤武 、中村敦夫 、仲代達矢

監督と主役が30年前と同じっていうだけのウリで、角川歴彦が角川春樹を超えようとした、でもおもいっきり滑った珍作。なんでいまさら、っていう「環境に対する思想」が皆無な企画。90歳を超える監督と60歳半ばの「疾走することが要求される」老俳優がゼイゼイと息を切らせて二人だけの同窓会。こんな映画が正月映画のとっておき、っていう形で公開されることそのものが「最高のミステリー」だわ。

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エラゴン 遺志を継ぐ者 2006-12-25

Eragon原題:ERAGON
邦題:エラゴン 遺志を継ぐ者
時間:104分
公開:2006-12-16
製作年度:2006
製作国:アメリカ
配給:FOX
製作総指揮:クリス・シムズ
製作:ジョン・デイヴィス、ウィック・ゴッドフレイ 
監督:シュテフェン・ファンマイアー
脚本:ローレンス・M・コナー 、マーク・ローゼンタール 、ジェシー・ウィグトウ
原作:クリストファー・パオリーニ
撮影:ヒュー・ジョンソン
音楽:パトリック・ドイル
出演:エド・スペリーアス 、ジェレミー・アイアンズ 、シエンナ・ギロリー 、ロバート・カーライル 、ジャイモン・フンスー 、ジョン・マルコヴィッチ 、ギャレット・ヘドランド 、ゲイリー・ルイス 、ジョス・ストーン 、クリストファー・イーガン 、タムシン・エガートン 、キャロライン・チケジー

ちょっと前から「伝記ブーム」「ファンタジーブーム」「史劇ブーム」がハリウッドを席巻してたわけで、そんなドサクサで企画が通ってしまった、本来なら圧倒的なB級映画レベルの原作もの。来年あたりには「黄金の羅針盤シリーズ」っていう映像化に圧倒的チャレンジ精神が必要なのも待ってるしね。ドラゴンクエストを文化として消化しちゃってる日本人にとって、このあたりのレベルの作品じゃ正月映画として大宣伝されてもプライオリティは低いまんまよね。「ダンジョン&ドラゴン」っていうビデオ発売しか道がなさそうなシリーズもあるけど、そんなのと同レベル。しかも「ロード」みたいに何部作かにするために、完全な導入部の作品。本格的には第二部を待て!みたいな仰々しい(でも凄く空しい)ラストカット。「パイレーツ2」のイカに飛び込む衝撃とは月とすっぽんだわ。結局のところ、プロデューサーも監督もキャストもB級でしかないのに超A級扱いされちゃった不幸なのね。メジャーリーグに挑戦する日本でさえ通用しないB級選手の末路と同じ。

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明日の記憶 2006-12-24

Ashitanokioku邦題:明日の記憶
時間:122分
公開:2006-05-13
製作年度:2005
製作国:日本 
配給:東映
製作総指揮:
製作:坂上順、川村龍夫
監督:堤幸彦
脚本:砂本量 、三浦有為子
原作:荻原浩
撮影:唐沢悟
音楽:大島ミチル
出演:渡辺謙 、樋口可南子 、坂口憲二 、吹石一恵 、水川あさみ 、袴田吉彦 、市川勇 、松村邦洋 、MCU 、遠藤憲一 、木野花 、木梨憲武 、及川光博 、渡辺えり子 、香川照之 、大滝秀治 、田辺誠一

日本アカデミー賞のノミネート作品で、この映画だけ観てなかったのでDVD。公開してる時も気にはなってたけど、プライオリティが低くて、なんか暗そうで痛そうで、結局見逃してた。でもアカデミー賞候補なら観る必要あるわよね、って彼氏と合意してレンタル。クリスマスに彼の部屋でこの映画もなんだかなぁっていうことなんだけど、まあ映画ファンとしては、どんな環境でもどんな映画でも観る「耐性」をもってなきゃいけないわけで。で、結論から言うととってもベタな経年型「病気進行エピソード提示」映画だったの。渡辺謙と樋口可南子の演技が素晴らしい。それだけでテレビじゃここまで彼らは気合入れないだろうなっていう「映画=本編」な重みを感じたわ。ストーリーは「頭ケシゴム」の方がベタ度が強くて泣かされちゃった係数が高かったけどね。バリバリのエリート広告マンが若年性アルツハイマーになるっていう「状況の悲劇」は十分伝わる。クライマックスの陶器窯のシーンは「夢」だったのかしら。ちょっとそこだけ読み取れない。

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オペラ座の怪人 2006-12-23

Phantomoftheopera2原題:The Phantom of the Opera
邦題:オペラ座の怪人
時間:143分
公開:2005/01
製作年度:2004
製作国:アメリカ
配給:GAGA
監督:ジョエル・シュマッカー
脚本:アンドリュー・ロイド=ウェバー
原作:アンドリュー・ロイド=ウェバー
音楽:アンドリュー・ロイド=ウェバー
製作:アンドリュー・ロイド=ウェバー
出演:ジェラルド・バトラー/エミー・ロッサム

この映画は2004年に「完成披露試写」ってことで、多分一般人としては初めて観てる。たしか読売ホール。で、このオリジナルステージは大好きだけど、キャスティングがノーネーム過ぎるって感想も書いた記憶があるわ。で、今回はなんと「Gyao」。やっぱり音楽が素敵でいっきに2時間半観てしまった。だけど、これって、「映画」というコンテンツの日本における「入り口」と「クライマックス」とで観たってことになるわよね。映画がネット配信で鑑賞できるっていう、しかも有料コンテンツとしてじゃなくて、無料(CM付)コンテンツとしてなんだもの。これ以上はもうビジネス的展開はタカが知れてるっていう「映画の老後」のような公開よね。でも前回も書いたノーネームなキャスティングの皆さんは、その後2年たっても、やっぱりノーネームなままね。「ドリーマーズ」のエヴェ・グリーンは大出世したけど。

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赤ちゃん教育 2006-12-22

Bringingupbaby1原題:BRINGING UP BABY
邦題:赤ちゃん教育
時間:102分
公開:1939-08
製作年度:1938
製作国:アメリカ
配給:RKO
製作総指揮:
製作:W・S・ヴァン・ダイク二世
監督:ハワード・ホークス
脚本:ダドリー・ニコルズ 、ヘイジャー・ワイルド
原作:
撮影:ラッセル・メティ
音楽:ロイ・ウェッブ
出演:ケイリー・グラント 、キャサリン・ヘプバーン 、チャーリー・ラグルス 、メイ・ロブソン 、バリー・フィッツジェラルド 、ウォルター・キャトレット 、フリッツ・フェルド 、ウォード・ボンド 、ジャック・カーソン

イライラする映画を観てしまったので、口直しにスクリューボール・コメディ。ケイリー・グラントとキャサリン・ヘップバーンについては山田宏一さんも高評価よね。戦前のメジャーコメディのご存知コンビなんだろうけど、本当にすごい。キャサリン・ヘップバーンの早口セリフが有名だったらしいけど、後半の警察署での「証言をタイプするのに早口すぎてタイプできない」っていうくすぐりにも使われてた。博物館の恐竜研究博士のケイリー・グラントに翌日新発見の「骨」が届くっていう幕開けから、ラストは豹をめぐって右往左往っていう「どうしてこうなっちゃうの?」っていうスクリューボール。ハワード・ホークスの思いっきり軽いタッチの演出も古臭さを感じないテンポを出してる。って必要以上に褒めてるかしら(ふたたび)。

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雪夫人絵図 2006-12-22

Yukifujinezu邦題:雪夫人絵図
時間:86分
公開:1950-10-21
製作年度:1950
製作国:日本
配給:新東宝
製作総指揮:
製作:滝村和男
監督:溝口健二
脚本:依田義賢
原作:舟橋聖一
撮影:小原譲治
音楽:早坂文雄
出演:山村聡 、浦辺粂子 、加藤春哉 、夏川静江 、久我美子 、小森敏 、上原謙 、石川冷 、田中春男 、浜田百合子 、柳永二郎 、木暮実千代 、水城四郎

華族のお姫様が下衆な成金に嫁いで、いじめられて苦労して。っていうイライラ感が極まる映画。華族制度が無くなった時代背景、本当にこの映画が作られた頃には、こういう「世が世ならお姫様」が没落していく物語りが「ニュース性のあるイマを描いたワイドショー的作品」として成立したんだろうなぁ。舟橋聖一の原作だって、そのあたりの「没落華族のお姫様をいじめる」っていうスキャンダラスなあたりを実は狙っていたりして。それはさておき、主人公の雪夫人の「決断力皆無、他者への依存」が病的で、さらに「憎む夫だけど女としての肉欲に負けて夫の理不尽な要求を断れない」っていう、現代じゃ考えられない自律喪失状態。そんな夫人に心を影ながらよせる琴の教師の上原謙。この琴の教師もどこまで我慢するんだろうって優柔不断さにイライラ。短い映画なのにここまでイラつかせる映画は初めて。

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ショーシャンクの空に 2006-12-21

Shawshank原題:THE SHAWSHANK REDEMPTION
邦題:ショーシャンクの空に
時間:143分
公開:1995-05
製作年度:1994
製作国:アメリカ
配給:松竹富士
製作総指揮:
製作:ニキ・マーヴィン
監督:フランク・ダラボン
脚本:フランク・ダラボン
原作:スティーヴン・キング
撮影:ロジャー・ディーキンス
音楽:トーマス・ニューマン
出演:ティム・ロビンス 、モーガン・フリーマン 、ウィリアム・サドラー 、ボブ・ガントン 、ジェームズ・ホイットモア 、クランシー・ブラウン 、ギル・ベローズ 、ポール・マクレーン 、マーク・ロルストン 、ジェフリー・デマン 、ラリー・ブランデンバーグ 、ニール・ジュントーリ 、ブライアン・リビー 、デヴィッド・プローヴァル 、ジョセフ・ラグノ 、ジュード・チコレッラ

ワケの判らない映画を観てしまって気分が悪くなったので、口直しで借りたDVD。ぐいぐいと引きこまれていく「語り口」の上手さ。何度観てもため息が出るモーガン・フリーマンの演技。溜飲が轟音を立てて下がるクライマックス。ラストカットの夢のような風景。2時間半があっと言う間に過ぎて行く映画(物語る娯楽)としてのお手本みたいなの。って、必要以上に褒めてるかしら。でもわたしの数少ない「気分を治す」映画のひとつなの。

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キスキス,バンバン 2006-12-21

Kisskissbangbang06原題:KISS KISS, BANG BANG
邦題:原題:KISS KISS, BANG BANG
邦題:キスキス,バンバン
時間:103分
公開:2006-04-08
製作年度:2005
製作国:アメリカ
配給:WB
製作総指揮:スーザン・レヴィン 、スティーヴ・リチャーズ
製作:ジョエル・シルヴァー
監督:シェーン・ブラック
脚本:シェーン・ブラック
原作:ブレット・ハリデイ
撮影:マイケル・バレット
音楽:ジョン・オットマン
出演:ロバート・ダウニー・Jr 、ヴァル・キルマー 、ミシェル・モナハン 、コービン・バーンセン 、ダッシュ・ミホク 、ラリー・ミラー 、ロックモンド・ダンバー 、シャニン・ソサモン 、アンジェラ・リンドヴァル

これってリメイクなの?ってどうでもいいけど、完全に破綻してる映画を久しぶりに観たわ。意味不明な事件にまきこまれて、意味不明にどんどん死体が増えていって、最後まで事件の原因や謎が解き明かされないっていうよりか、解き明かしてるんだろうけど、映画的な説明が下手で全然理解不能で、誰が誰なのかさっぱり人間関係も判らないまま終わったの。ちょっと二日酔いで脳が麻痺してたからかしら。それにしてもサスペンスなのかコメディなのか、両方を狙ったのか、いったい、どんな創造的欲求を持って制作者たちはこの映画に係ったのかさっぱり判らない。

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アルティメット 2006-12-21

Banlieue13原題:BANLIEUE 13
邦題:アルティメット
時間:85分
公開:2006-07-15
製作年度:2004
製作国:フランス
配給:ザナドゥー、ヨーロッパコープ
製作総指揮:ベルナール・グルネ
製作:リュック・ベッソン
監督:ピエール・モレル
脚本:リュック・ベッソン 、ビビ・ナセリ
原作:
撮影:マヌエル・テラン
音楽:
出演:シリル・ラファエリ 、ダヴィッド・ベル 、トニー・ダマリオ 、ラルビ・ナセリ 、ダニー・ヴェリッシモ

なんの予断も期待もしないで観たら、ヨーロッパコープ作品だった。とうとうここまで話題にならないでヨーロッパコープもの(=ベッソンブランド)が安っぽく興業されるっていうの、栄枯盛衰ね。そりゃそうね、キャスティングなんか日本じゃ完全無欠なノーネームだもの。で、こういう生まれながらにして不幸を背負う映画って、時々びっくりするくらい「面白」かったりするわけで、この作品もそう。安っぽい一本調子で先が読めるベタな近未来ものなんだけど、なんとなくきちっと娯楽作として合格点もらえちゃいそうな「短編マンガ」みたいな存在になってるの。テレビで90分枠くらいで放送するとピッタリな起承転結と画面に食い入っちゃうタイプのアクションシーン。スケール感からもテレビ向き。興業価値が「アンジェラ」で完全にマイナスへ転じた(と断言してもいいわよね)ベッソンブランド。こういった、ちょっと油断すると意外に面白い映画も出てくるからあなどれない。って、期待値がゼロだった分、小さいプラスでも満足できちゃうっていうことなのかしら。道を歩いていて、10円じゃなくて100円玉ひろったようなプチラッキーな気分。

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蒼き狼 地果て海尽きるまで 2006-12-19

Aokiookami邦題:蒼き狼 地果て海尽きるまで
時間:146分
公開:2007-03-03
製作年度:2006
製作国:日本/モンゴル
配給:松竹
製作総指揮:
製作:角川春樹、千葉龍平 
監督:澤井信一郎
脚本:中島丈博、丸山昇一
原作:森村誠一
撮影:前田米造
音楽:岩代太郎
出演:反町隆史 、菊川怜 、若村麻由美 、Ara 、袴田吉彦 、松山ケンイチ 、平山祐介 、津川雅彦 、松方弘樹

映画が「スペクタクル(見世物)」であるなら、まさに映画。数千人、数万人のエキストラ、広大なモンゴル平原での4ヶ月のロケ。いわゆる映画の「巨大=サプライズ」さを宣伝文句のメインにしうる規模。そんな「超大作」っぽい「超大作」は、やっぱり稀代の山師角川春樹じゃなきゃ、臆面もなく仕上げられないのかもしれないわね。「アレキサンダー」や「トロイ」と並んでも「宣伝文句」としては遜色ないものが使えると思うわ。チンギス・ハーンっていうヒーローの「史劇」だしね。日本語のセリフでもいいの。強引にストーリーの不連続な連鎖でもって観客を引きずってもいいの。大味でもいいの。スペクタクルなら、全てが許せるの。そんな「どうだ、凄いだろう!こんなの観た事ないだろう」っていう角川春樹の気合がスクリーンからほとばしる。っていうより大作にレイプされているみたいな「もうどうにでもして」って思わせてしまう圧倒的な「肯定の強要」に、目が据わって電車の中で独り言をわめいている危ないおじさんを遠巻きに眺めるしかない状態と同種類の達観が必要になっていく。そういう意味では欧米(死語から復活語)の史劇の裏にある「サービス精神」に似たスケールの巨大さとはちょっと異質に見える。余裕があるのと背伸びしてるのとの違いかしら。いずれにしろ伝説のコピー「赤と黒のエクスタシー」をモンゴルの大地で「青いエクスタシー」へスケールアップしているっていう「角川春樹の満足」が達成させられたっていう、映画史的なサイドストーリーには欠かせない作品として生まれたのは確かかもしれないわ。

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赤線地帯 2006-12-19

Akasenchitai邦題:赤線地帯
時間:86分
公開:1956
製作年度:1956
製作国:日本
配給:大映
製作総指揮:永田雅一
製作:
監督:溝口健二
脚本:成沢昌茂
原作:芝木好子
撮影:宮川一夫
音楽:黛敏郎
出演:京マチ子 、若尾文子 、木暮実千代 、三益愛子 、町田博子 、川上康子 、進藤英太郎 、沢村貞子 、浦辺粂子 、小川虎之助 、菅原謙二 、多々良純 、宮島健一 、見明凡太郎 、加東大介

昭和31年公開の映画。売春防止法が昭和33年だから2年前の姿ね。浅草吉原の赤線地帯。「吉原が300年続いたってことは、必要があったから」って「夢の里」の女将が言うけど、結局、今でも吉原はあるものね。それはさておき、群像劇としては久しぶりに堪能したわ。赤線の売春宿「夢の里」の女たち、っていう人物配置で、それぞれの女たちがそれぞれのワケアリの人生をかかえて、それぞれがその職業によって人生を狂わされ、そのお先真っ暗な人生から脱出しようともがき、破綻し、成功し、そんな女たちに新しい女が加わって、多分、わたしは一生忘れないラストカットへつながるの。初店の九州から売られてきた女の子がカメラに向って、おずおずと手招き(客呼び)をするアップ。お先真っ暗な商売なのに、そこでしか生きていけない16歳の女の子の絶対的な人生破綻の予感。成沢昌茂の脚本も凄いけど、それぞれの女たちを見事に描き分けて、演じさせて行った溝口健二監督の演出力は驚嘆するわ。ロバート・アルトマンが群像劇を得意としてたけど、この作品を超えるのは無いかも。

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近松物語 2006-12-18

Mizoguchi邦題:近松物語
時間:102分
公開:1954-11-23
製作年度:1954
製作国:日本
配給:大映
製作総指揮:
製作:永田雅一
監督:溝口健二
脚本:依田義賢
原作:近松門左衛門
撮影:宮川一夫
音楽:早坂文雄
出演:長谷川一夫 、香川京子 、南田洋子 、進藤英太郎 、小沢栄 、菅井一郎 、田中春男 、石黒達也[俳優] 、十朱久雄 、荒木忍 、東良之助 、橘公子 、浪花千栄子 、葛木香一 、水野浩 、天野一郎 、原聖四郎 、伊達三郎 、石原須磨男 、芝田総二 、篠原隆 、三上哲 、横山文彦 、藤川準 、玉置一恵 、堀北幸夫 、岩田正 、三浦志郎 、金剛麗子 、仲上小夜子 、小柳圭子 、種井信子 、小林加奈枝 、小松みどり
近松門左衛門の原作。心中モノじゃないのね。とはいえ、さまざまな誤解とボタンのかけ違いで堕ちていく、長谷川一夫の手代と香川京子の大経師夫人の不倫。ふつうなら、その前に逃げようも調整しようも説明しようもあるのに、って思うけど、主人公たちは「悲劇的に死ぬ」という予定されたクライマックスへ到達するために、あらゆる救われる可能性を排除していくっていう釈然としない物語。でも演劇だものね。クライマックスがあるからこそ、その経過の物語が「避けようのない迷い込んだ袋小路」でなければならないし、演劇的に道行もなければならないし、互いに「愛」に目覚める場もなければならなし、だって近松だもの。早坂文雄の音楽が文楽、歌舞伎的な音響効果をメインに使っていて、あくまで「演劇的な心理と状況における映画的な表現による近松舞台」っていう「見世物」としての作品の立ち位置を現出しているの。溝口健二監督の画が古典演劇の格調に見事にはまっていて、それでいて映画的な奥行きや動きが計算されているっていう点では巨匠の力なのね。

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嘆きのテレーズ 2006-12-17

Therese_raquin原題:THERESE RAQUIN
邦題:嘆きのテレーズ
時間:107分
公開:1954-04
製作年度:1952
製作国:フランス
配給:新外映
製作総指揮:
製作:
監督:マルセル・カルネ
脚本:マルセル・カルネ 、シャルル・スパーク
原作:エミール・ゾラ
撮影:ロジェ・ユベール
音楽:モーリス・ティリエ
出演:シモーヌ・シニョレ 、ラフ・ヴァローネ 、ローラン・ルザッフル 、ジャック・デュビー 、シルヴィー

テレーズ・ラカンっていう原題。主人公の主婦ね。公開時の日本女性のモラルじゃとても受け入れられなかったかもしれないエミール・ゾラの原作もの。ときめきや愛のない夫婦生活へ汗臭いタフガイが登場して、生きる望みを失っていた「主婦」が「よろめく(死語ね)」っていう類型的な不倫ドラマなんだけど、フランス映画になっちゃうと、それが肯定されてしまう心理になっちゃうってうところが、フランス語の魔力かもしれないわ。「欲望という名の電車」のマーロン・ブランドを彷彿とさせるラフ・ヴァローネの存在感。でもけっこう人間としての弱さが満点で、強気な冒頭からクライマックスの超弱気な小物な感じの落差が激しすぎ。ホテルの小間使いが封筒を郵便配達に渡して、配達人が「僕は恋の配達人」っておどけるシーンが、いかにもフランス映画ね。主人公たちを殺人者として告発する手紙なのに、小間使いの女の子のラブレターと勘違いするっていう「FIN」のエンドタイトルが相応しい、悲劇的なクライマックス。50年経て映画は「マッチ・ポイント」へ進化してるのね、人生の本質を描くのに。

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新・平家物語 2006-12-16

Shinheikemonogatari邦題:新・平家物語
時間:108分
公開:1955-09-21
製作年度:1955
製作国:日本
配給:大映
製作総指揮:
製作:永田雅一
監督:溝口健二
脚本:依田義賢 、成沢昌茂 、辻久一
原作:吉川英治
撮影:
音楽:早坂文雄
出演:市川雷蔵[8代目] 、久我美子 、林成年 、木暮実千代 、大矢市次郎 、進藤英太郎 、菅井一郎 、千田是也 、柳永二郎 、羅門光三郎 、夏目俊二 、河野秋武 、中村玉緒 、十朱久雄 、沢村国太郎 、香川良介 、杉山昌三九 、南條新太郎 、荒木忍 、東良之助 、西田智 、上田寛 、小柳圭子

平清盛の若き日を描いた映画。ああ、だから「新・平家物語」なんだ、タイトルが。色が綺麗。王朝の雅、なんていうタイプの雅楽のリズム感のだるいタイプの映画かと思ったら、アメリカ映画もビックリっていうくらいに「成長する若者の成長の痛み」みたいな青春ドラマになってるの。父と子の誤解と葛藤、武士階級として認知される「力の本領」を持ち始める、っていう価値観の転換期を描いている。画面の構図やメリハリは溝口健二監督の緻密な技がさえていて、っていうより冴えすぎて堅苦しさっていうか、自由さが皆無な「監督の意志の具現化」がされていたわ。

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リバティーン 2006-12-16

Libertine原題:THE LIBERTINE
邦題:リバティーン
時間:110分
公開:2006-04-08
製作年度:2004
製作国:イギリス
配給:メディア・スーツ
製作総指揮:チェイス・ベイリー 、スティーヴ・クリスチャン 、マーク・サミュエルソン 、ピーター・サミュエルソン 、ラルフ・カンプ 、ルイーズ・グッドシル
製作:リアンヌ・ハルフォン、ジョン・マルコヴィッチ、ラッセル・スミス 
監督:ローレンス・ダンモア
脚本:スティーヴン・ジェフリーズ
原作:スティーヴン・ジェフリーズ
撮影:アレクサンダー・メルマン
音楽:マイケル・ナイマン
出演:ジョニー・デップ 、サマンサ・モートン 、ジョン・マルコヴィッチ 、ロザムンド・パイク 、トム・ホランダー 、ジョニー・ヴェガス 、ケリー・ライリー 、ジャック・ダヴェンポート 、リチャード・コイル 、フランチェスカ・アニス 、ルパート・フレンド 、ポール・リッター 、スタンリー・タウンゼント

いつの間にか公開して、なんにも話題としてわたしのアンテナに受信できなかった今年公開のジョニー・デップ。で、気にはなってたんでDVDを借りた。破滅型の人生を歩んだロチェスター伯爵の半生、っていうコスチュームもの。っていう情報さえゼロで見たんだけど、ジョニー・デップはすっごく頑張ってた。ただ、監督の演出力が、ディテールにこだわりすぎて、全体的な「物語の流れ」にメリハリを欠いてしまってるの。マルコヴィッチの王様もすっごく熱演なんだけど、個々の俳優の「熱演」が交差するだけで、そこに物語が紡がれていかない。いったい、この時代の何がどう問題で、なぜどうして個々のキャラクターがそのために行動して、っていう「動機」が説明されてこないので、クライマックスでのカタルシスが皆無な映画になってる。えっと、もう、終り?なんて感じで勝手に閉じられてしまって、残された観客はどうしたらいいの!ってね。

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ブレイド3 2006-12-16

Bladetrinity原題:BLADE: TRINITY
邦題:ブレイド3
時間:114分
公開:2005-05-07
製作年度:2004
製作国:アメリカ
配給:日本ヘラルド
製作総指揮:アヴィ・アラッド 、トビー・エメリッヒ 、スタン・リー
製作:デヴィッド・S・ゴイヤー、リン・ハリス、ウェズリー・スナイプス 
監督:デヴィッド・S・ゴイヤー
脚本:デヴィッド・S・ゴイヤー
原作:
撮影:ガブリエル・ベリスタイン
音楽:ラミン・ジャワディ 、RZA
出演:ウェズリー・スナイプス 、クリス・クリストファーソン 、ドミニク・パーセル 、ジェシカ・ビール 、ライアン・レイノルズ 、パーカー・ポージー 、ジョン・マイケル・ヒギンズ 、トリプル・H 、ジェームズ・レマー 、ナターシャ・リオン 、マーク・ベリー 、カラム・キース・レニー 、ポール・アンソニー 、フランソワーズ・イップ 、マイケル・アンソニー・ローリンズ 、エリック・ボゴシアン

ウィズリー・スナイプスってパトスで3作連続公開なんてこともやってて、なんか知らないけど、どこかにコアな「信者」がいるもかもしれない。あなどれないわよね。で、ブレイドっていうキャラなんだけど、ヴァンパイアとの混血で、ヴァンパイアハンターとして闇を生きてる超強い役柄。物語はとってつけたようなもので、ウィズリー・スナイプスのパンクなアクションをお楽しみください、っていうタイプの映画。ウィズリーなら何でも観るけど、ブレイドってのはクールでサイコーだよねぇ!って、イギリスの地理的位置さえ知らない底辺系アメリカの、ピアスの大きさに命をかけたようなヒップな子たちがポプコーンをスクリーンに投げつけながら鑑賞するっていうタイプの映画。って修飾語が多すぎ?商品としてマーケットがあれば提供するっていう「娯楽産業」としては、そこに確実に利益のあがる計算があるわけで、そういう意味では、明日は路上でドラッグをやりとりする人間失格な皆さんからも、しっかり「入場料金」を頂く、っていう仕組みなのは、ユダヤ人っぽい産業よね。映画って。

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ロープ 2006-12-15

Ropes演目 ロープ
作・演出 野田秀樹
出演 宮沢りえ、藤原竜也、渡辺えり子、宇梶剛士、橋本じゅん、三宅弘城、松村武、中村まこと、明星真由美、野田秀樹
劇場 文化村シアターコクーン

プロレスのリングの中では何が起きても、起きなかったことになる、っていう「導入設定」から、そのリングの中の「死」さえ起きておらず、そのリングとしての「ミライ村」、ベトナム戦争時に4時間で消えた(住民皆殺し)村の唯一の生き残りが。という相変わらずの綾織のような、導入部からは想像もつかない「全体の模様」が現れてくるっていう野田秀樹さんの「世界の作り方」。宮沢りえが頑張ってたけど、もうちょっと「早口が出来て、声の通りがいい」女優のほうがよかったかも。渡辺えり子が生き生きしてた。やっぱり、ユダヤ人の社長ってキーワード?21世紀の地球では。

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人生は、奇跡の詩 2006-12-14

Tigreelaneve原題:LA TIGRE E LA NEVE
邦題:人生は、奇跡の詩
時間:114分
公開:2005
製作年度:2006-12-09
製作国:イタリア
配給:ムービーアイ
製作総指揮:エルダ・フェッリ
製作:ニコレッタ・ブラスキ
監督:ロベルト・ベニーニ
脚本:ロベルト・ベニーニ、ヴィンセンツォ・セラミ
原作:
撮影:ファビオ・チャンチェッティ
音楽:ニコラ・ピオヴァーニ
出演:ロベルト・ベニーニ 、ニコレッタ・ブラスキ 、ジャン・レノ 、トム・ウェイツ 、エミリア・フォックス 、ジャンフランコ・ヴァレット

ロベルト・ベニーニのキャラクター芸が冴える作品ね。とにかく大阪人じゃないけど、お喋りの「間」を作りたくないっていうタイプのキャラで、ひたすらしゃべり続けるの。原題と邦題に落差がありすぎなんだけど、原題の直訳じゃ日本人には理解できないだろうし、でも、原題こそ、この映画の「感動」を表現しているの。しかも、想像もしてなかった「どんでん返し」が用意されていて、ちょっと泣かされてしまったわ。「ライフ・イズ・ビューティフル」でもそうだったけど、ロベルト・ベニーニが演じる夫の「一途さ」って凄い。本当に凄い。こういう彼氏が欲しい!って心から思うわ。絶対日本人じゃいないと思うけど。これほど愛されてみたいわ。まじ。

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山羊座のもとに 2006-12-14

Under_capricorn原題:UNDER CAPRICORN
邦題:山羊座のもとに
時間:117分
公開:未公開
製作年度:1949
製作国:イギリス
配給:WB
製作総指揮:
製作:シドニー・バーンスタイン、アルフレッド・ヒッチコック
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ジェームズ・ブリディ
原作:ヘレン・シンプソン
撮影:ジャック・カーディフ、ポール・ビーソン、イアン・クレイグ
音楽:
出演:イングリッド・バーグマン 、ジョセフ・コットン 、マイケル・ワイルディング 、マーガレット・レイトン

ヒッチコックが「ロープ」とともにワンカット撮影を試みた作品っていうことで知られているけど、日本じゃ劇場未公開なのね。キャスティングもそれなりに豪華なのにね、残念。中味が悪すぎるんだもの。日本人うけしないかもしれないわ。サスペンスも希薄だし、オーストラリアが舞台でイギリスの犯罪者差別なんて話じゃねぇ。で、「ロープ」はワンカット撮影で、しかも2時間の出来事を2時間の映画で描くっていう物凄い実験をして、成功している作品なんだけど、この映画は「意味がない」ワンカット撮影なの。別にワンカットで描く必要もないのにワンカット。ヒッチコックとしてはどんな「目的」を持っていたのかしら。トリフォーのインタビューだと本人が「意味なかった」って言ってるらしいけどね。それにしてもバーグマンが綺麗だけど、目がいっちゃってる風でちょっと怖かったわ。

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硫黄島からの手紙 2006-12-14

Ioujimakaranotegami原題:LETTERS FROM IWO JIMA
邦題:硫黄島からの手紙
時間:141分
公開:2006-12-09
製作年度:2006
製作国:アメリカ
配給:WB
製作総指揮:ポール・ハギス
製作:クリント・イーストウッド、スティーヴン・スピルバーグ、ロバート・ロレンツ
監督:クリント・イーストウッド
脚本:アイリス・ヤマシタ
原作:アイリス・ヤマシタ、ポール・ハギス
撮影:トム・スターン
音楽:クリント・イーストウッド
出演:渡辺謙 、二宮和也 、伊原剛志 、加瀬亮 、中村獅童 、裕木奈江
東宝や東映が一昔前に必ず夏場に「8.15」ネタで大作戦争映画をかけていたわけで、ビデオだけどそんなシリーズ?の2~3本を観た事もあるわ。で、これらの作品群は、しっかり作ってるドラマチックな作品もあれば、単なるお涙頂戴の「戦争悲劇(主人公は絶対ラストに散る)」で、底流には「戦争はもうしないどこう」っていう反戦テイストも効かせて、でも終戦記念日にはどうぞ、っていうコマーシャルな興業作品として成立していたらしい。でも、そんな興行成績も期待どおりにならなくなって、最近はあえて「8.15」なPRはしなくなってるわよね。「出口のない海」とかも、そういう売り方してなかったし。という「太平洋戦争映画はもう儲からない」っていう日本映画の流れの中で「硫黄島からの手紙」クラスの映画は「日本人としては体験済み」なわけだと思うの。免疫があるっていうの?全編(といってもいいくらい回想シーンはちょっとだけあるけど)戦場シーン。玉砕する硫黄島守備隊の、元気な時から死滅する時までを描いているわけで、あとはそれぞれのキーキャラクターが縦横無尽に関係しながら悲劇的な結末へまっしぐら。もちろんアメリカ映画だけあって、製作費もふんだんにありそうで、バリバリの物量で「戦争」を描いている「スペクタクル」はあるけど、物語としては「8.15」シリーズなわけ。でも、多分、アメリカ人(ハリウッドが主導する映画産業)にとっては「初めてみる日本兵映画」っていう事になると思うの。イーストウッドが監督したから。観るわよね、もちろん。「トラトラトラ」のようなキワモノとは違って、ほとんど「日本映画」として成立しかねない作品で「日本兵の映画」を真正面から観たアメリカ人はびっくりしたかもしれない。免疫ゼロだものね。細菌に死滅する火星人みたいに。で、この作品がアカデミー賞へ向けて各賞を獲りはじめそうな勢いなんだから、すごい。「8.15菌」の猛威よね。多分日本人ならクシャミひとつしないような細菌にアメリカのアカデミー会員はのきなみ発熱・興奮・投票っていう症状に侵されていくかもしれないわ。

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ノスタルジア   2006-12-13

Nostalghia原題:NOSTALGHIA
邦題:ノスタルジア
時間:126分
公開:1984-03
製作年度:1983
製作国:イタリア/ソ連
配給:フランス映画社
製作総指揮:
製作:レンツォ・ロッセリーニ、マノロ・ボロニーニ 
監督:アンドレイ・タルコフスキー
脚本:アンドレイ・タルコフスキー 、トニーノ・グエッラ
原作:
撮影: ジュゼッペ・ランチ 
音楽:
出演:オレグ・ヤンコフスキー 、エルランド・ヨセフソン 、デリア・ボッカルド 、ドミツィアーナ・ジョルダーノ

読解力不足なのか、よくわかりませんでした。やっぱりわたし、バカだわ。主人公が「望郷=ノスタルジア」しているロシアの風景。家族を7年間家に閉じ込めていた男の持つ極私的世界。外界との唯一の接点だった女性通訳。そんなパーツが並べられてるんだけど、全編を通して示唆されているのは、自分の「在るべき(居るべき、じゃなくて)場所」が、「ここじゃないどこか」=「イメージの中の故郷」ってことなのかしら。ロシア人の心情にシンクロするのって私の能力じゃ絶対的に無理があるんだもの。画面がきれい。特に「緑色」がとても綺麗だったわ。

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ブラックブック 2006-12-12

Blackbook2原題:ZWARTBOEK
邦題:ブラックブック
時間:124分
公開:2007-03
製作年度:2006
製作国:オランダ/ドイツ/イギリス/ベルギー
配給:ハピネット
製作総指揮:グレアム・ベッグ 、ジェイミー・カーマイケル 、サラ・ジャイルズ 、アンドレアス・グロッシュ 、ヘニング・モルフェンター 、アンドレアス・シュミット 、マーカス・ショファー 、チャーリー・ウォーケン
製作:ジェローン・ベケル、テューン・ヒルテ、サン・フ・マルタ、ジェンス・ミューラー、ジョス・ヴァン・ダー・リンデン、フランス・ヴァン・ジェステル 
監督:ポール・ヴァーホーヴェン
脚本:ジェラルド・ソエトマン 、ポール・ヴァーホーヴェン
原作:ジェラルド・ソエトマン
撮影:カール・ウォルター・リンデンローブ
音楽:アン・ダッドリー
出演:カリス・ファン・ハウテン 、トム・ホフマン 、セバスチャン・コッホ 、デレク・デ・リント 、ハリナ・レイン 、ヴァルデマール・コバス

第二次世界大戦ヨーロッパのレジスタンスもの。なんていうとすっごい古臭い映画よね。でも本当に古臭いの。なんでいまさらこんなテーマで映画を作るのかしら。オランダに帰ったポール・ヴァーホーヴェン監督がロボットの刑事でもなく、透明人間でもなく、ガチなレジスタンスものなんだもの。で、納得いかないのはテーマってことで、じゃあ映画はっていうと、それなりに面白く観てしまったから悔しい。もちろん、最後に生き残るヒロインがいるわけだから、起死回生や九死に一生なご都合主義な展開が満載なエンタテイメント・スパイ?・レジスタンス?映画にしたてられてるの。騙しや裏切りや恋愛が交錯しながらオランダのレジスタンスを描いて行くわけで、まあ、フランス映画じゃ重箱の隅をつついてもネタはもうありません、てくらい作られたタイプのテーマでも、オランダじゃまだまだ未開拓ってことかしら。ベルギーのお隣の国っぽく、チョコレートが全編を通してキーアイテムになってるけど、これってタイアップかしらん。邦題を再考したほうがいいかもしれないわ。「ブラックブック」じゃよく判らないもの。それに宣伝もしづらそう。マクガフィンかと思ったら最後の方で出てきたしね。っていうか、最後にやっとタイトルになってるブツが出てくるから、それまでは、この映画のタイトルの意味不明なまま展開しちゃうんだもの。であれば、もっと「鑑賞のフック」になるような邦題をつけたほうがいいわよね。多分。

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山椒大夫 2006-12-12

Sansyoudayu邦題:山椒大夫
時間:124分
公開:1954-03-31
製作年度:1954
製作国:日本
配給:大映
製作総指揮:
製作:永田雅一
監督:溝口健二
脚本:八尋不二 、依田義賢
原作:森鴎外
撮影:宮川一夫
音楽:早坂文雄
出演:田中絹代 、花柳喜章 、香川京子 、進藤英太郎 、河野秋武 、菅井一郎 、見明凡太郎 、浪花千栄子 、毛利菊江 、三津田健 、清水将夫 、香川良介 、橘公子 、相馬幸子 、小園蓉子 、小柴幹治 、荒木忍 、加藤雅彦 、榎並啓子 、大美輝子 、金剛麗子 、南部彰三 、伊達三郎
溝口健二って巨匠なんでしょ。ガーデンシネマで連続上映してたりして。で、友達がBSで放送してるのをDVDに録画してるんで借りて見る事にした。50年以上前の映画だから物語や筋立てに、現代風なケレンやスピード感は無いんだけど、画面の構図が凄いの。シーン毎に固定したカメラが捉える映像は木の位置や人間の位置や道具の動きや、っていうのがきちんとバランスよくおさまってるの。絵画みたい。あ、ちがうかも、っていうシーンもカメラがすっと動くと、画面の外に設定されていた人物や道具がきちんと入ってきて、ビシッと完全に構図された画面が出来上がってくる。遠景や近景の描写、特に遠景の人物や道具の「遠いことによる動きの近景とのバランス」とかも計算されていて、映画の丁寧な作り方のお手本みたいな作品だったわ。物語は森鴎外の山椒大夫=安寿と厨子王なわけで、きちんと映画化されてるみたいだけど、50年前は、この程度の「物語」で観客は満足したんだ、っていう点で「良い時代だったのね」って思うわ。ともあれ、SFXやCGを駆使したスペクタクルや遠景なんか気にもしてない単館系日本映画の「粗製乱造の時代」をリアルタイムで生きてるわたしは、憧れと嫉妬を50年前の映画界に感じるわ。

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手紙 2006-12-11

Tegami2006邦題:手紙
時間:121分
公開:2006-11-03
製作年度:2006
製作国:日本
配給:GAGA=東映
製作総指揮:
製作:宇野康秀、大澤茂樹、高瀬哲、細野義朗、日下孝明、常田照雄 
プロデューサー:朴木浩実、橋口一成
EXプロデューサー:河井信哉、星野有香、大村正一郎、松山彦蔵
監督:生野慈朗
脚本:安倍照雄 、清水友佳子
原作:東野圭吾
撮影:藤石修
音楽:佐藤直紀
出演:山田孝之 、玉山鉄二 、沢尻エリカ 、吹石一恵 、尾上寛之 、田中要次 、山下徹大 、石井苗子 、松澤一之 、螢雪次朗 、小林すすむ 、松浦佐知子 、山田スミ子 、鷲尾真知子 、高田敏江 、吹越満 、風間杜夫 、杉浦直樹

差別についての物語。服役中の強盗殺人犯の弟が、さまざまな人生の局面で「殺人犯の身内」ってことで差別され続けるっていうお話。でも「殺人犯」という言葉を別の言葉に置き換えていけば、あらゆる差別の問題に符号するのかもしれない。という点では「殺人犯」というキーワードが「無難」なものになってるのよね。この場合、差別を描くのに。まあ原作がそういうものなのだろうから、この映画の場合、どこまで悲劇的に弟を差別によって追い込むかっていう表現的エスカレートが大事なんで、成功や幸せが大きいほど、差別によってそこからつき落とされる落差が大きいって事で、落差の分、墜落した時の痛みも大きくなるの。兄弟の、っていうより兄からの切々たる「手紙」に対応していく弟と、彼に思いを寄せる女性っていう構造で、結局のところ「不確かな和解」みたいなあやふやで、未来に何にも救いが具体的に置かれていないままエンディングを迎えてしまう。ヒトゴトのような上司の説教や、公園で遊びに入れてもらえる娘の姿だけで、主人公たちの明るい未来を想像しろって無理な話よね。実はなにも終わってないし始まってもいないっていう、はなはだ映画的カタルシスを欠如した作品になってるってことが致命的。ヒットしてるらしいけど、テレビドラマ鑑賞力しかないレベルの観客が刑務所慰問の漫才で兄に語りかける「ここしかないお涙ちょうだいシーン」と「小田和正の歌」で「予定調和に泣かされて」、結果「いい映画だったみたい」な感想を保持して「お茶」しにいくっていう事が可能だ、っていう安っぽさが理由なのかもしれないわね。

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疾走 2006-12-10

Shisso邦題:疾走
時間:125分
公開:2005-12-17
製作年度:2005
製作国:日本
配給:角川映画=エンジェル・シネマ
製作総指揮:
製作:三木裕明
監督:SABU
脚本:SABU
原作:重松清
撮影:中堀正夫
音楽:S.E.N.S.
出演:手越祐也 、韓英恵 、中谷美紀 、豊川悦司 、大杉漣 、寺島進 、加瀬亮 、菅田俊 、高橋ひとみ 、柄本佑 、田山涼成 、鈴木一真 、矢沢心 、平泉成

重松清って嫌い。中学生くらいの主人公に「世の中の理不尽をつきつけてキレさせる」芸風の小説ばっかり書くから。って友達が宣言してたけど、わたしは幸にも重松清の本は読んだこともないからどーでもいいって思ってたの。ところが、この映画が重松清原作っていうことで、心ならずも重松を受容するはめになっちゃった。で、友達の「重松評」は完全に当たっていたってことが確認できたんだけど、同時にSABU監督は「わたしは嫌い」ってことまで確認できちゃった。これまたどーでもいいけど。とにかく中学生を不幸のどん底に落としたら、どういう反応を起こすかなっていう実験をしてるみたいで、思考実験で終わらせればいいのに、小説に書き、映画にまでして「救いのないってことを証明」することはないのに!。中谷美紀がこんな役やってんだぁ、豊川悦司っていったいどこへ行こうとしてるのかしら、なんて余計なことをストーリーそっちのけで考えてた。ってことは、観客をひきつけるパワーが皆無な映画ってことなのかもね。

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ドラムライン 2006-12-10

Dramline原題:DRUMLINE
邦題:ドラムライン
時間:119分
公開:2004-04-10
製作年度:2002
製作国:アメリカ
配給:FOX
製作総指揮:ダラス・オースティン 、グレッグ・ムーラディアン
製作:ティモシー・M・バーン、ウェンディ・フィネルマン、ジョディ・ガーソン
監督:チャールズ・ストーン三世
脚本:ティナ・ゴードン・キスム 、ショーン・シェップス
原作:ショーン・シェップス
撮影:シェーン・ハールバット
音楽:ジョン・パウエル
出演:ニック・キャノン 、ゾーイ・サルダナ 、オーランド・ジョーンズ 、レナード・ロバーツ 、GQ 、ジェイソン・ウィーヴァー 、アール・C・ポインター

2年前に「ブラスト!」っていうドラムラインなパフォーマンスを有楽町に見に行ったけど、ちょうどその頃公開していた作品。パフォーマンスが凄すぎて2~3日身体がジンジンしてたけど、そのパフォーマンスのオリジナルが、この映画に描かれているマーチングバンドなわけよね。大学対抗で5万人の観客の前で技を競い合うっていうイベントがあるってだけで、アメリカ的よね。なんでも「おおごとなイベントにしちゃう=権威にしちゃう」っていうあたり。歴史の浅い国家は歴史を作りたがるのね、あらゆる局面で。物語はジャンプ系。スネアの天才君が天才すぎて生意気でチームから浮き上がるけど、最後は改心して和解してヒーローになるっていう「ブルーカラー・ウィークエンド」テイストな超わかりやすさ。南部のシネコンなんかじゃ黒人観客が総立ちになって大騒ぎだったんだろうなぁ、クライマックスは。

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恋におちたシェイクスピア 2006-12-08

Shakespeareinlove原題:SHAKESPEARE IN LOVE
邦題:恋におちたシェイクスピア
時間:123分
公開:1999-05
製作年度:1998
製作国:アメリカ
配給:UIP
製作総指揮:ボブ・ワインスタイン 、ジュリー・ゴールドスタイン
製作:デヴィッド・パーフィット、ドナ・ジグリオッティ、ハーヴェイ・ワインスタイン、エドワード・ズウィック、マーク・ノーマン 
監督:ジョン・マッデン
脚本:マーク・ノーマン 、トム・ストッパード
原作:
撮影:リチャード・グレートレックス
音楽:スティーヴン・ウォーベック
出演:グウィネス・パルトロー 、ジョセフ・ファインズ 、ジェフリー・ラッシュ 、コリン・ファース 、ベン・アフレック 、ジュディ・デンチ 、トム・ウィルキンソン 、サイモン・キャロウ 、ジム・カーター 、マーティン・クルーンズ 、イメルダ・スタウントン

「ロミオとジュリエット」をシェイクスピアが書きあげた時の秘話、なんていう設定で素敵なラブストーリーに仕上げられている。こりゃアカデミー賞もらうわよね、会員もこういうの好きかもね、って納得できる格調とゴージャスさと高揚するメロドラマライン。「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」でそれほどの監督?って感じたんだけど、やっぱりこの出世作?はよく出来てる。もうちょっとシェイクスピアのオリジナルを知ってたら、さまざまなセリフの「意味」や「暗喩」が理解できるんだろうなぁ、ってイギリスのエスタブリッシュたちに軽い嫉妬を感じながら字幕を読んでたわ。残念。

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カトマンズの男 2006-12-08

Katomanz原題:LES TRIBULATIONS D'UN CHINOIS EN CHINE
邦題:カトマンズの男
時間:109分
公開:1966-05
製作年度:1965
製作国:フランス/イタリア
配給:UA
製作総指揮:
製作:
監督:フィリップ・ド・ブロカ
脚本:ダニエル・ブーランジェ 、フィリップ・ド・ブロカ
原作:ジュール・ヴェルヌ
撮影:エドモン・セシャン
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
出演:ジャン=ポール・ベルモンド 、ウルスラ・アンドレス 、ヴァレリー・ラグランジェ 、ダリー・コール 、ジャン・ロシュフォール

フランスの40年前の「ジェットコースター・アクション・サスペンス・コメディ」っていう作品ね。結局、なにがなんだか判らないうちに、理由もわからないのに香港からカトマンズへひとっとび、そして香港、マシンガンで銃撃戦。これでもヒットしたっていうから不思議ね。40年前だとこのスピード感で満足してたのかしら。いちいち細かい「説明つき」のギャグ小ネタが置かれているの。そんな小ネタの集合体が「カトマンズの男」っていう映画。ストーリーや俳優の衣装のつながりなんか、どうでもいいから、ここのギャグで笑っておくれよ!っていう瞬間瞬間で過去シーンを忘却することを強いる作品なの。って忘却しないと「なぜ?どして?」って疑問符がスクリーンを埋め尽くしてしまうから。

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東京ゴッドファーザーズ 2006-12-08

Tokyogodfathers原題:Tokyo Godfathers
邦題:東京ゴッドファーザーズ
時間:90分
公開:2003-11-08
製作年度:2003
製作国:日本
配給:SPE
製作総指揮:
製作:小林信一、滝山雅夫
監督:今敏
脚本:今敏 、信本敬子
原作:今敏
撮影:須貝克俊
音楽:鈴木慶一
出演:江守徹 、梅垣義明 、岡本綾 、飯塚昭三 、加藤精三 、石丸博也 、槐柳二 、屋良有作 、寺瀬今日子 、大塚明夫 、小山力也 、こおろぎさとみ 、柴田理恵 、矢原加奈子 、犬山犬子 、山寺宏一

アメリカ映画で、しかも40年代あたりの「人間謳歌」系な物語。ジェームズ・スチュワートが主役やってもよさそうな、ウォルター・ブレナンがいい脇役やっててもよさそうな物語。映画的な「ご都合」がふんだんに盛り込まれて、登場人物3人の人生が「クリスマスの奇跡」のように、神様に感謝したくなるような、ハッピーエンディングを用意していある帰納法的なアニメね。捨て子を拾ったホームレス3人が右往左往して、っていうロードムービー風でもあるんだけど、ってここまで書いていて、これはきっと「ジャパンアニメっていう市場があるアメリカマーケットで、アメリカ人好みのストーリーでおもねった、狙いが明確な」映画なのかも、って気づいた。ああ、そういう映画だったんだ。日本でうけるより、アメリカマーケットで満足していただくタイプのアニメなんだぁ。ってアメリカでヒットしたって聞いてないけどね。

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武士の一分 2006-12-06

Bushinoichibun邦題:武士の一分
時間:121分
公開:2006-12-01
製作年度:2006
製作国:日本
配給:松竹
製作総指揮:迫本淳一
製作:深澤宏、山本一郎
監督:山田洋次
脚本:山田洋次 、平松恵美子 、山本一郎
原作:藤沢周平
撮影:長沼六男
音楽:冨田勲
出演:木村拓哉 、檀れい 、笹野高史 、小林稔侍 、赤塚真人 、綾田俊樹 、近藤公園 、岡本信人 、左時枝 、大地康雄 、緒形拳 、桃井かおり 、坂東三津五郎[10代目]

山田洋次監督の「田舎侍もの」ならリスペクトしなければならないっていう、へんな風潮があるみたい。っていうか、批判しづらい状況へ追い込まれていくっていうのかしら。「毒見役の貧乏侍が腐った貝を食べて盲目になって、女房を寝とられて、相手に復讐する」っていうだけの物語を121分かけて見せてくれる。巨匠だから。キムタクが出てるから。映画が「見世物(スペクタクル)」ってことなら、それは十分に資格や条件を備えているんだけど、それが面白いかどうかっていうのは冷静に見極めたいわよね。で、わたしは「たいしたことない」っていう結論。知り合いで「黒沢映画は全部傑作」って豪語する人がいるけど、それに近いわ。「寅さん」以降の山田洋次は「傑作しか作らない」みたいなプロパガンダが松竹からされているっぽい。油断しちゃだめ。

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ラスベガスをやっつけろ 2006-12-06

Fearandloathinginlasvegas原題:FEAR AND LOATHING IN LAS VEGAS
邦題:ラスベガスをやっつけろ
時間:118分
公開:1999-10
製作年度:1998
製作国:アメリカ
配給:東北新社
製作総指揮:ハロルド・ブロンソン 、リチャード・フース
製作:ライラ・ナバルシ、パトリック・カサヴェッティ、スティーヴン・ネメス
監督:テリー・ギリアム
脚本:テリー・ギリアム 、トニー・グリゾーニ 、トッド・デイヴィス 、アレックス・コックス
原作:ハンター・S・トンプソン
撮影:ニコラ・ペコリーニ
音楽:レイ・クーパー 、布袋寅泰
出演:フリー 、ジョニー・デップ 、ベニチオ・デル・トロ 、トビー・マグワイア 、キャメロン・ディアス 、クリスティナ・リッチ 、マーク・ハーモン 、エレン・バーキン

ジョニー・デップが118分間ラリってる映画。おまけにデル・トロもラリってる。ドラッグ漬けのままラスベガスで取材を続ける記者なんだけど、世の中の全てが自分のために存在するみたいな「モラル喪失」な状態。ちょっと憧れるかも。ここまで、人生やら常識やらを棄てて(無くなっちゃってる)強烈なドラッグに脳を破壊されてるっていう、ある意味至福な状況になりたいなぁ。しがらみだらけだもの。実際は。なにをしてても「**はどうしようかしら」なんて答えのない問題に白黒つけなきゃいけないっていう難問を頭の隅に置いてあるんだもの。ああ、忘れたい。ジョニー・デップのハゲは強烈。

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デリカテッセン 2006-12-05

Delicatessen原題:DELICATESSEN
邦題:デリカテッセン
時間:100分
公開:1991-12
製作年度:1991
製作国:フランス
配給:ヘラルド
製作総指揮:
製作:クローディー・オサール
監督:ジャン=ピエール・ジュネ 、マルク・キャロ
脚本:ジャン=ピエール・ジュネ 、マルク・キャロ 、ジル・アドリアン
原作:
撮影:ダリウス・コンジ
音楽:カルロス・ダレッシオ
出演:ドミニク・ピノン 、マリー=ロール・ドゥーニャ 、ジャン=クロード・ドレフュス 、カリン・ヴィアール 、ティッキー・オルガド 、アン=マリー・ピサニ 、エディス・カー 、チック・オルテガ

近未来の核戦争後のフランスっていう設定。ふつうの下宿屋で肉屋の大家と入居者が共謀して新しい住民を誘いこんで「肉」として分けあうっていうカンニバリズム満点なスチームパンク。水分量が多い画面、人工着色のような色彩、鬱な気分に追い込まれるフリークス寸前の出演者たち。この作品から「ロスト・チルドレン」と続けば、やっぱり「エイリアン」を作らせて見たいっていう流れになるのは納得よね。汚物臭い風景と人物たちが奇跡のように化学変化したのが「アメリ」なんだわ。きっと。狂気にある画家の絵を集めたサイトがあったけど、そこに並んでいる「絵画」とジュネ作品は共通する「幻視」を持ってるみたいね。

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ありがとう 2006-12-04

Arigatou2006邦題:ありがとう
時間:125分
公開:2006-11-25
製作年度:2006
製作国:日本
配給:東映
製作総指揮:
製作:仙頭武則
監督:万田邦敏
脚本:平山譲 、仙頭武則 、七字幸久 、万田邦敏
原作:平山譲
撮影:渡部眞
音楽:長嶌寛幸
出演:赤井英和 、田中好子 、薬師丸ひろ子 、尾野真千子 、前田綾花 、光石研 、尾美としのり 、柏原収史 、今福將雄

関西エリアのローカル映画なのかしら。多分。1995年の震災でなにもかも失った主人公が家族や地元の仲間に支えられながら60歳なのにプロゴルフテストに合格するまでの物語。実話なんだから、その真実の持つ力っていうものは大いにあるし、あの震災で人生が大きく変わった人々のいる中、こういう成功例もあるっていう点では映画っぽい題材なんでしょうけど。でも、なんか釈然としないのはなぜ?。物事を屈折して見てしまうわたしとしては、映画の中があまりに「美化」されすぎてるからかもしれないわ。登場人物がみんな「いいひと」で、悪役は「地震」で、あとはそこから立ち上がって、頑張って、クライマックスに成功して、までが一本道。そんなにスムースだったの?って疑ってかかっちゃうのは汚れてる?わたしの心。ゴルフ映画って難しいわよね。ゴルフシーンを上手に描いた映画って洋画でも記憶にないし、まして日本映画でもね。そういう意味では「真実」がそうなんだからしょうがないけど、ゴルフ映画として立ち位置もあるわけで、であれば、もうちょっとゲームとしてのサスペンスや緊張感が欲しかったかも。林の中で飛び込んで、キャディさんが「これで打って」ってクラブを渡して、っていうところが唯一かしら。合格ラインが上がったり下がったりする情報を入れながら、主人公がスコアを上げたり下げたり、ピンチになったりっていうドキドキが欲しかったなぁ。監督がゴルフ好きじゃないのかしら。

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オースティン・パワーズ ゴールドメンバー 2006-12-04

Austin2002原題:AUSTIN POWERS IN GOLDMEMBER
邦題:オースティン・パワーズ ゴールドメンバー
時間:95分
公開:2002-08-24
製作年度:2002
製作国:アメリカ
配給:GAGA
製作総指揮:
製作:ジョン・S・ライオンズ、エリック・マクレオド、デミ・ムーア、マイク・マイヤーズ、ジェニファー・トッド、スザンヌ・トッド 
監督:ジェイ・ローチ
脚本:マイク・マイヤーズ 、マイケル・マッカラーズ
原作:
撮影:ピーター・デミング
音楽:ジョージ・S・クリントン
出演:マイク・マイヤーズ 、ビヨンセ・ノウルズ 、マイケル・ヨーク 、セス・グリーン 、ロバート・ワグナー 、フレッド・サヴェージ 、ミンディ・スターリング 、ヴァーン・J・トロイヤー 、マイケル・ケイン 、ブリトニー・スピアーズ 、グウィネス・パルトロー 、ケヴィン・スペイシー 、ダニー・デヴィート 、クインシー・ジョーンズ 、オジー・オズボーン 、トム・クルーズ 、バート・バカラック 、ロブ・ロウ 、ジョン・トラヴォルタ 、スティーヴン・スピルバーグ

カメオ出演が豪華すぎて笑っちゃう。オースティン・パワーズの活躍を映画化するっていうんでオースティン役をトム・クルーズが演じてるっていうシーンが冒頭。なんてこと!。というわけで、相変わらずなオ馬鹿映画で、その狂乱っぷりは「朝日相撲アリーナ」の発想。最後はどーでもよくなったようで、オースティンとドクター・イーブルは兄弟になっちゃうし。ってことでストーリーを追うよりも、シーン毎の凝った仕掛けにケラケラ笑っていれば95分間ハッピーでいられるわよ!っていうドラッグのような作品ね。ああ、こういう映画を観てる時こそ、アメリカ人に生まれてたらって思うわ。絶対、大声で笑って楽しめるものね。

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まぼろし 2006-12-03

Souslesable原題:SOUS LE SABLE
邦題:まぼろし
時間:95分
公開:2002-09-14
製作年度:2001
製作国:フランス
配給:ユーロスペース
製作総指揮:
製作:オリヴィエ・デルボスク、マルク・ミソニエ 
監督:フランソワ・オゾン
脚本:フランソワ・オゾン 、エマニュエル・ベルンエイム 、マリナ・ドゥ・ヴァン 、マルシア・ロマーノ
原作:
撮影:アントワーヌ・エベルレ(第一幕)、ジャンヌ・ラポワリー(第二幕)
音楽:フィリップ・ロンビ
出演:シャーロット・ランプリング 、ブリュノ・クレメール 、ジャック・ノロ 、アレクサンドラ・スチュワルト 、ピエール・ヴェルニエ 、アンドレ・タンジー

地味な公開だったので見逃していたオゾン監督作品。シャーロット・ランプリングが堂々と心を病んだ中年(老年)女性を演じているのが評判だったと記憶している。「美女」女優っていう印象のあった彼女が、ある意味、老醜をさらしながら、そのリアルな女性像を演じているっていうのが凄い。日本だと誰だろう。方向は違うけど冨司純子かなぁ。特に「フラガール」の。フランス映画っぽい、っていうか、オゾン監督の「曖昧な謎」を残す、鑑賞後の心に澱が残るようなタッチに、静かに狂っている未亡人の一人芝居。現実と幻想が曖昧に交差していく彼女のゆれる心。「夫への愛」「一人でいる恐怖」がまぼろしの夫に見られながら性交するっていう倒錯した狂気の発作に、女性の心への不信感をたっぷり描いている。オゾン監督がゲイであるっていう原因もあるからかしら。

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ライフ・イズ・ビューティフル 2006-12-03

Lifeiseatiful原題:LA VITA E BELLA
邦題:ライフ・イズ・ビューティフル
時間:117分
公開:1999-04
製作年度:1998
製作国:イタリア
配給:アスミックエース
製作総指揮:
製作:エルダ・フェッリ、ジャンルイジ・ブラスキ 
監督:ロベルト・ベニーニ
脚本:ヴィンセンツォ・セラミ 、ロベルト・ベニーニ
原作:
撮影:トニーノ・デリ・コリ
音楽:ニコラ・ピオヴァーニ
出演:ロベルト・ベニーニ 、ニコレッタ・ブラスキ 、ジョルジオ・カンタリーニ 、ジュスティーノ・デュラーノ 、セルジオ・ブストリック 、マリサ・パレデス 、ホルスト・ブッフホルツ

ロベルト・ベニーニの新作がまもなく公開されるっていうことで、予習。ホロコースト系ってイマイチ苦手な分野なんで、評判だった映画も先送りしているうちに見逃していたっていうわけで、まあここに至っては観ておかねばってね。お話は二部構成って印象。前半はおしゃべりな楽天家給仕のベニーニが意中の女性を口説くお話。ピタゴラスイッチみたいに小さな伏線が奇跡のように繋がって彼女のハートを射止めるの。なんか素敵、っていうか映画でなければ描けない「都合」の連鎖。後半はユダヤ人収容所の生活。子供を隠しながら、女性棟にいる妻へ「生きてるよ!」ってさまざまな手口で伝えていくの。これも映画でなければ描けない「都合」の連鎖。で、作品の底流に流れ続けるLA VITA E BELLAっていう愛情と希望。映画の語り部が救われた「少年」だったっていうクライマックスで「すばらしき父親」に拍手。っていう映画なんだけど「ああ、よかったわね」って感じてしまう心のテンションが、ホロコーストで救われなかった数百万人を忘れてしまってる事実に気づくと怖い。拍手しちゃいけない映画なんだもの。本当は。

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善き人のためのソナタ 2006-12-01

Thelivesofothers原題:DAS LEBEN DER ANDEREN
邦題:善き人のためのソナタ
時間:138分
公開:2007
製作年度:2006
製作国:ドイツ
配給:アルバトロス・フィルム
製作総指揮:
製作:
監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
脚本:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
原作:
撮影:
音楽:ガブリエル・ヤレド
出演:ウルリッヒ・ミューエ 、マルティナ・ゲデック 、セバスチャン・コッホ 、ウルリッヒ・トゥクール
欧州映画賞作品賞を受賞っていうから、ヨーロッパではかなり評価されているのね。東ドイツの秘密警察の圧政時代のドラマなんだけど、盗聴ストーカーなお話。魔女狩りのような自由主義者狩りが横行してる東西冷戦時代末期で、「社会主義の敵を告発」=「現体制の維持への求心力」っていう自転車操業的な背景が凄い。なんか、こんなことやってたんだぁって西側の人たちはビックリ、っていうことで、「観た事ないことを見せてくれるが映画」っていう琴線に触れちゃって、思わず「賞」なんかをあげちゃったんじゃないかしら。盗聴捜査をしている主人公が「被疑者」のカップルへ感情移入していってしまう、っていう過程を読み取るのがちょっとさりげなすぎで、っていうか、ささいなきっかけすぎて、思想的に啓蒙洗脳されたっていうより、カップルの女性への勝手な横恋慕でしかないっていう下世話な動機にしか見えないんだから困る。困ってもしょうがないけどね。「寒い国から来たスパイ」みたいなハードなリアルな東西緊張っぽい空気感を描いているけど、やっぱりそういうのが緩みっぱなしの現代じゃ「東にいた人たちの懐古」「勝ち組の西側の人たちが優越感を感じるビックリ真実」なんていう程度のインパクトしかないわ。わたしらみたいな極東の黄色い猿にとっちゃドーデモイーんだもの。劇作家が出版した本の「謝辞」に、ひそかに彼らを救った(動機は不純だけどね)捜査官の名前があって、おちぶれた元捜査官が「わたしの本だ」って買っていく感傷的なクライマックスが「文芸作品」っぽい一種の格調がありそげに仕立て上げられてるから、多分、大多数の観客は「感動してしまった作品」っていう錯覚で劇場を後にするのかもしれないわ。日本でこの作品の「持つ物語」はヒトゴトでしかないし、統一ドイツの人々にとってのみ、物凄く意味の有るかもしれない作品だと想像するわ。

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