ユナイテッド93 2006-09-22
原題:UNITED 93
邦題:ユナイテッド93
時間:111分
公開:2006-08-12
製作年度:2006
製作国:アメリカ
配給:UIP
製作総指揮:ライザ・チェイシン 、デブラ・ヘイワード
製作: ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー、ロイド・レヴィン
監督:ポール・グリーングラス
脚本:ポール・グリーングラス
原作:
撮影:バリー・アクロイド
音楽:ジョン・パウエル
出演:ハリド・アブダラ 、ポリー・アダムス、オパル・アラディン 、ルイス・アルサマリ 、デヴィッド・アラン・ブッシェ
今日で最後なので不義理をしながらも劇場へ行った。うちのめされた。こんなに凄い映画だとは「予告編のB級ハイジャックもの風」な作りからは想像もできなかったわ。現実にあった事件の再現フィルムっていう、テレビ的に言えば「事件ネタのワイドショー的説明手口」なのに、監督の力量が観客の想像を凌駕したの。ドキュメントタッチ、というよりドキュメンタリーを観てるの?って錯覚するくらいに「911を航空管制と空軍」の立場から描いて、そしてクライマックスへ向ってグイグイと観客を引っ張っていく。ラベルのボレロの演奏はスネアーを指先でさするように叩いてリズムを作るところから始まる。そして20分間クレッシェンドしていって、クライマックスはフルオーケストラがフォルティティティッシモでラストコードを叩きこむの。その一瞬後に訪れる静寂。楽器はひとつも鳴っていないのに耳の奥に「音波、音圧」の余韻。最後の8小節は聴衆は呼吸を止めて聞き入る。そしてラストコードの静寂の中で「ふぅ・・・」と息を吐き出す。そんなカタルシスがボレロっていう曲。そして、この作品は「映画でボレロ」を観せてくれた。映画には主人公っていう役柄の人は出てこない。しいて言えばハイジャック犯かな。でも、スクリーンの中にある主役は「あの日、9月11日に起きた事件」そのものなの。そしてその事件はボレロのスネアーのように、ほんの小さな、誰も気づかない、でも全編を通して必要な「偶然に遭遇してしまった」人々の運命のリズム。事件は刻々とクレッシェンドし、各地の管制、空軍、が混乱をしつつ事態を認識しようとしつつも追いつかず、ボレロのシンバルが鳴るクライマックスのようにハイジャック機は目標に激突し、そして93便はラストコードへ向けて落下していく。飛行機を奪い返した乗客の努力もむなしく窓からは地上がみるみる近づいて、近づいて、暗転。ボレロの静寂。わたしは止めていた息を長く吐き出したわ。
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