The Dreamers 2003,9,26

出演:Michael Pitt,Louis Garrel,Eva Green
製作:Jeremy Thomas
2003 伊英仏映画
1960年代風のクレジット、セピアがかったテクニカラーテイストなオープニング。多分エッフェル塔のエレベータから鉄骨を眺めているよう。で、舞台も1968年の5月革命前夜のパリ。シネマテークでは30年代の映画を政治的意味を持たせて上映。そこへ集う映画オタクたち。語られる台詞はマニアックな映画理論。ヌーベルバーグが熟し、政治的発言力が映画にあった旧き良きおぞましき時代。ベトナム戦争徴兵逃れ?でパリへ遊学しているアメリカ人大学生と、一卵性双生児の姉弟とのセクシャルな夢のような一ヶ月。この3人が原題なんだろうって思う。アメリカ人学生はベルトリッチだろうし、ある意味では姉弟の父親が<現在のベルトリッチ>でもありそうだし。さまざまに「解釈」の余地がありすぎる、ホントに過剰にありすぎる、ベルトリッチの自慰的私小説ね。すべてが象徴であり、暗喩であり、パロディであり、それが悉く「映画」である、という一点に収束するの。だから、かなりスキルが無けりゃ、単なる難解な、意味不明のエピソードが連続するポルノ映画にしか見えない。で、おそらく、日本の観客は、99%がそう。少しでもこの映画の<判って欲しい>部分の尻尾を捕まえられるのは、かなりの「あの頃の時代の肌触りについての体感的知識」が必要かもしれない。そういう意味では極東の黄色い猿に観てもらおうって露ほど思っていない。置いてけぼりね。ベルトリッチって、結局、自分の事しか考えてないし、自分の周りの事しか興味ないし、でも、作品だけは不思議に持て囃されるから、困る。亜細亜の片隅で、この映画を観ても、判ろうってのが無理。判ろうとして、かなりの強力(ごうりき)でベルトリッチへ歩み寄っても、得るものはないの。そう、解釈への努力が報われない作家なのね。別に、解釈を努力するのも馬鹿な行為だとは思うけど。自爆…。とはいえ、解釈が多様にでき、それぞれの理屈が錯綜する鑑賞後感の不協和音にも似た空疎かもしれない議論が、自虐的に楽しいかもしれない。ああ、やだやだ。映画なんか好きになるもんじゃないわよね。そういう意味では、長く舐めていられる飴のような映画なのかな。しかも舐める角度で味が変わったり、形がかわったりする、ちょっと癖になる飴。あ、すっかりベルトリッチの術中に嵌ってる。だから、巨匠づらされてしまうのね。「2001年~」にしたって、解釈の嵐のような映画だったし。監督した本人は、それを面白がって聞いてるだけ。答えは教えてくれないの。あ、なんか、デ・ジャ・ヴ。これって、エヴァンゲリオンが近いかも。オタクの衒学合戦みたいな事になっちゃうのって。
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