ぼくの好きな先生 2003,9,25

監督:ニコラ・フィリベール
ずいぶん年配の観客が多いな、と思ってたら映画を観て理由が判った。そこら中の映画はカットカットが短くて、それでスピード感や緊迫感やリズム感を出して、飽きさせない演出をしているけど、この作品は、そういったものを全て放棄している。というか、そもそもそういうアングルが一切、必要でない作品。ワンカットが10秒以上、それも風にそよぐ樹木、教室を歩く2匹のカメ。チャカチャカとワンカットが短い最近の映画は、反射神経が弱っている年配層にはつらいのかもしれない。そんな最近の映画へのアンチテーゼとして存在しているのかもね。描かれているのは、フランスの片田舎の小学校。定年を翌年に控えた<生涯、キレることがなさそうな>穏やかな先生と生徒たちの<日常>を散文的にスケッチしているだけのもの。よく、これで商業映画として成立したのね、って、作品の存在そのものに感動してしまう。NHK教育放送でも企画通らないかもしれない。観客は時折バカ受けして笑う。不気味だ。特に幼児生の他愛の無い会話。多分、日本語字幕を観て笑う。翻訳者の勝利。家庭学習のくだり。大笑いが。出来の悪い子供を教えたことのある<経験からくる>笑い。画面に映っている子供たちは、平日午後に銀座の暗闇に集うオトナたちにとって、かつて可愛かった頃の我が子であり、我が孫であり。そして、子供を支配できて、幸せだった時代を懐かしむ。素直に子供や孫が育たなかったことへの贖罪。ああ、我が子の学校の先生も、この映画の先生のような人だったら、ウチの子はもっと素直になったかもしれないのに、という空疎な無い物ねだり。だから、この映画は、底知れないパワーを持って、おそらく、語り継がれるようなヒット作となる予感がする。
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